単行本化時に買い損ねて、非常に悔しい思いをしました。 連載が途中で終わってしまった続編も再開を望みます。
ゲーム内容については他の方がレビューされているので、内容以外の視点から本作をレビューしてみます。
「海外市場を意識したゲームが多い中、国内向けの作品をしっかりと作りたい」というコンセプトでつくられている『龍が如く』シリーズ。今回も強烈に日本へ向けてのメッセージを送っています(少し大げさかも?)。
沖縄の米軍基地問題を始まりとして、殺人事件の冤罪問題、現代日本でも「貧困」があること等を、エンターテインメントとして上手く演出しながらもするどく切り込んでいます。
通常、こういった問題を映画やゲーム等で伝えようとすると得てして「説教臭く」なるものですが、水が流れるようによどみなく、そして奇麗にプレイヤーの心に入り込んできます。このあたりは流石と言えます。
「ヤクザ」が主人公であったり、「暴力的」な描写が時には批判となる中で、「主人公側から闘いを仕掛けることはない」、「子ども殺しと麻薬だけは取り扱わない」、「時として必要な暴力もある」という明確なコンセプトがあるために、作品に一本奇麗な筋が通っています。
「ゲーム」というエンターテインメントを「一つの芸術」に高めようとした本作は是非多くの人にプレイしてほしいと思います。
花家氏の作品は本作の他に「八丁堀春秋シリーズ」と「竹光半兵衛うらうら日誌」を愛読しているが、どの作品も人と人との人情が溢れた良作である。 本作品は3作目の「葉隠れ侍」で新兵衛の想い人波路との再会を果たしたが、これで終わりとするにはいかにも惜しい。 表題が「口入れ屋人道楽帖」とあるため、本来は口入れ屋の庄三郎が斡旋する人々の話でも良かったわけだが、漫画家が言うところの、「キャラが勝手に動き出す」と同様の事がこの新兵衛を持ってして花家氏のペンにも生じているのではないか。 それほど新兵衛のキャラクターがあまりにも強すぎて、他に主人公を持っていこうとしても結構難しいのではないだろうか。 1作目でお家騒動に巻き込まれて脱藩をやむなくされた新兵衛が江戸に根を下ろし、新兵衛を狙う無頼の旗本次男坊らを懲らしめる話。 2作目はそのお家騒動の決着と前作の旗本たちが新兵衛を狙った理由の判明。 3作目が無頼の旗本らの騒動で逃げおおせていた残党の捕縛に協力、改心した岩伍を本物の親分に生まれ変わらせる話。 そして、それぞれの話の中で人の輪が拡がっていき、新兵衛のキャラクターはますます光を放っていく。 新兵衛も波路と夫婦になり穏やかな暮らしを望むであろうが、無理難題は次々と向こうからやってくるだろう。 いかに難しかろうと飄々と解決の糸口を見つけ出すのが新兵衛であり、波路は黙ってそれを見守っている。そんな夫婦の様子も見てみたい。 アイデア次第では長く続けられる作品だと思うが、それを推敲するのに花家氏はかなりの時間を要しているのではないだろうか。 「竹光半兵衛シリーズ」は3巻をもって完の様相で、「八丁堀春秋シリーズ」も次作の発表がまだであり、次作の発行を心待ちにしている数少ない作家さんである。 粗製濫造で某氏の作品に少々飽きが来ている昨今、是非とも諸兄の本棚に並べて欲しい一作として推薦します。
|