私がこの少し変わった
タイトルの「第七官界彷徨」という小説を知ったのは、紀田順一郎さんの「現代人の読書術」(1972年 毎日新聞社)
に収録されていたブック・リストによってです。そのブック・リストには学藝書林の本が紹介されていました。
調べてみますと、、全集・現代文学の発見の第6巻に収録されていました。話は少し横道にそれますが、この全集、当時としては、
相当ぶっ飛んだ企画で、従来の文学全集には収録されないような作品が、かなり収録されていました
・・・それで本作も収録されたんでしょうが・・・・・
私は、本作を現代文学の発見で読んだのか、その後に出た
薔薇十字社の「アップルパイの午後」・・・きれいな装丁の本でした・・・
で読んだのか、記憶は定かではないんですが・・・・・
本作の主人公は、赤い縮れ毛の髪の少女、小野町子、人間の第七官に響くような詩を書こうとしていますが
・・・この第七官(感)という概念がよくわからないんですが・・・・
現在は、北向きの女中部屋に住み込んで、兄たちの家事手伝いをしています。
他の住人は、、兄の一助(精神科医)、次兄の二助(部屋の中で植物と肥料の関係を調べている)、そして、従妹の三五郎(音大受験生)、
そして、この少し変わった住人達との日常生活、交友関係、恋愛が描かれています。その他の登場人物は、柳浩六、幸田当八、
土田九作 などすべて漢数字が入っています・・・何か意味があるのかな??・・・
恋愛と言っても現代のような直截的なものではなく、プラトニックなおっとりしたもので、二助などはその対象が人間ではなく、植物!!
この小説の魅力を、言葉で表すと非常に難しいのですが、自信がありそで、なさそうな、そんな少女の感覚、
ある種の少女マンガのような、そんな感性の少女、女性が見事に描かれています・・・相当時代を先取りしていますね!!!・・・・
なお、本文庫には、その他、歩行、こおろぎ嬢、地下室アントンの一夜、アップルパイの午後・・・小野町子関連の作品、
瑠璃玉の耳輪が収録されています。少し遅かったですが、これで岩波文庫にもやっと尾崎翠が収録されました!!!