カバー折り返し部分に書かれた説明文によると、『
五大湖フルバースト』とSF相撲漫画3部作の位置づけは次のようになっています。
『
五大湖フルバースト』は「大相撲 "心・技・体" 伝説」と銘打ち、大相撲をモチーフに構想された3部作の、第2部にあたる作品である。この3部作は、力士が備えるべき3要素である「心・技・体」を象徴する
横綱たちと、心技体を完全に備えた"伝説の
横綱"との対決を、SF/ファンタジー的な要素を交えて描いた、異色の連載相撲漫画となっている。
大相撲 "心・技・体" 伝説2 "技"の章である『
五大湖フルバースト』に登場するのは、「心・技・体」のうち、技を象徴する
横綱の
五大湖です。
相撲がアメリカの国技(ナショナル・スポーツ)となった時代に、ミシガン州デトロイトに存在する大相撲の聖地たるD・S・G(デトロイト・スモー・ガーデン)にて、機械化された不世出の
横綱五大湖と角界の守護神たる伝説の
横綱との大一番が繰り広げられる、という設定です。
父は息子に何を求めるか、息子は父に何を求めるか、世代を越えての父子の葛藤、
五大湖を機械化した科学者は何が目的なのか、などの要素を盛り込み、脇道にそれずに上下2巻の中でうまくまとまっていると思います。ちなみに、下巻の後半には大相撲 "心・技・体" 伝説1 "体"の章である『両国リヴァイアサン』が収録されています。
SF相撲漫画3部作の「伝説3 "心"の章」が完結されるためには、本書上下巻の商業的な成否が重要な鍵となるそうです。
伝説の日本人
横綱に、あらゆるテクニック〈技〉を駆使するも悉く退けられる
五大湖。遂には最強の必殺技まで破られ・・・まるで「ウルトラマン対ゼットン」を彷彿とさせる死闘である。「土俵の鬼」として肉親の情〈心〉を絶ち続け、「技の
横綱」として相撲をとり続けるために、病魔に冒された己の身〈体〉を投げ擲ちてテクノロジー〈技〉の
横綱として改造された
五大湖。そんな
五大湖が「心・技・体」全て揃った相手に勝てなかったのは道理なのかもしれない。
だが、闘いの中で
五大湖がクリスとの親子の情〈心〉を取り戻したのは、彼にとっての唯一の救いであり、私は涙無しで読むことはできなかった。
なお、本作〈技〉の前に描かれた『両国リヴァイアサン』〈体〉や作者の実体験を元にしたオマケマンガ(絵が水木しげる風)も収録されているので、設定や画風の変遷といった作者の成長ぶりを辿れるのも、本作の味わいの一つである。
最終章〈心〉が本当に待ち遠しい。