ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルの代表的な歌劇『ジュリオ・チェーザレ(ジュリアス・
シーザー)』の中で、
クレオパトラを演じているナタリー・デセイの
アリアを堪能できるように編集されたアルバムです。
パリのノートルダム・デュ・リバン 教会で2010年11月6〜13日に録音されました。
女性指揮者エマニュエル・アイム(バロック・オペラを得意としています)とナタリー・デセイとは親密な間柄で、デセイのバロック音楽のレパートリーは大抵アイムの指揮によるものです。
フランス人同士ですし、2人から同質の知的な香りが漂ってきます。
ピリオド楽器奏者によって編成されているル・コンセール・ダストレは、伸びやかで響きの美しいオケでした。17曲目の「シンフォニア」では金管奏者の音程の取りにくい楽器を雰囲気よく魅力的に演奏しているのが伝わり、気に入りました。
オペラですから、場面によって、ソニア・プリナ(コントラルト)とスティーヴン・ヴォレス(カウンターテナー)も登場しますが、ほとんどデセイのソロでした。
なお、リーフレットには解説と歌詞や対訳があります。
もともと女優だったデセイの魅力は圧倒的な表現力と、華麗とも言えるソプラノ・レジェ(軽めのソプラノ)の透明な響きでしょう。ビブラートも少なく、ピッチの正確な彼女の歌唱は、ヘンデルの音楽でも十分その特性が生かされていますし、聴かせてくれました。
高音部でも崩れずに発声し、弱音でも豊かな響きを保てる技術は超一流の証だと思っています。第3幕 第7場の
アリア「嵐で木の船は砕け」での早い技巧的なパッセージを音楽的に彩り聴かせました。バロック・オペラというと退屈するイメージがありますが、そんなことは全くありません。
ベン・ハー製作50周年記念限定3枚組ブルーレイが発売された時(すぐに買いましたが、観る時間も無く、未だパッケージも破いていません)次は、これだと確信してましたが、案の定、出してくれました。
10年前に出た、スペシャル3枚組DVDのオーナーの、関心事は2点。第一が、L・マンキーヴィツ監督が切望していた
シーザー編、アントーニー編、各三時間のフィルムが発見されたのか?第二が、HD化によりどこまで画質が向上しているのか?(DVDバージョンでも十分鮮やかでしたが・・・)
第一の点ですが、フイルムは今回も見つからず、幻に終わりました。DVDと同じ、
ニューヨーク・プレミアバージョンと呼ばれる、現時点では最も長い4時間強のバージョンでした。
第二の点ですが、これは予想以上の素晴しい美しいさです。(旧作品がHD化して再発売されても、どこをHD化したの?首を傾げたくなる作品が多い中)HD画像の特徴である、衣装のマテリアルを艶やかに表現してくれる点が、最大限に生きています。例えば、冒頭、クレパトラと対立している弟、プトレマイオス王がアレキサンドリアの宮殿前で、
シーザーと謁見するシーン。王の側近達(将軍、宦官長、教育係、神官)衣装の息を呑む程の鮮やかな事!勿論、リズの演じる
クレオパトラの着る多くのコスチューム、
シーザー、アントニー、
ローマ軍の将校・兵士、元老院や
ローマ市民他登場人物全てが素晴しい。
DADでは気になった、フイルムの粒子の粗さが、HD化ではナノレベルに向上?3Dとは違う、言うなればパースペクティブ(遠近感・奥に広がりのある)画面になっていると感じました。撮影現場の空気すら感じる事が出来ます。有名な
クレオパトラの
ローマ入場シーンを撮る為、最高の光を求めて、半年も待った理由も今なら理解出来ます。もしかしたら、画面の大きさを除けば、50年前
ニューヨークや
ハリウッドのプレミアショーで観賞した、著名人ですらこれ程の美しさを体験したのでしょうか?10年のテクノロジーの進歩に敬意を払うと同時に、旧製品ながら、使っているAV機器の潜在能力を確認させて頂きました。
作品の内容より、使った金や、製作時の多くのトラブル、出演者のスキャンダル等が取りざたされる本作品ですが、20世紀の文化遺産とみれば、価値観が複雑になった今の時代、これ程までに訴求力のある作品は作れないでしょうね。テーラー程のオーラを感じさせる女優もいませんし・・・。
公開から50年、テクノロジーの進歩により素晴しい体験が出来ました。次の10年はどうなるのかな?3D?4K?8K?
ブルーレイを観れる環境の方は、買い換えるに十分な価値があると思います。