この作品が公開されたのは1983年。
大韓航空機爆破事件やガルフエア771便爆破事件などの航空機テロ、アメリカ軍のグレナダ侵攻などの不安定な国際情勢が人々に重く圧し掛かっていた時代である。
作品の設定はミュンヘン・オリンピック事件(テロリストによりイスラエル選手団の内11人が死亡した事件)を背景にロサンゼルスオリンピックの警備強化計画の一片として導入された攻撃ヘリコプターを主軸に据えており、文民統制と(当時は不安定な国際情勢からより身近に感じられた)国家による危機管理という危険な状況を「ジョン・バダム」監督お得意のハイテク軍事スリラーとして上手に
仕上げてある。
冒頭、テロップで流される「この作品はフィクションである。しかし、登場するテクノロジーはすべて実現可能である」は極一部を除けば現在、実用化されている事を考えると「先見性」ではなく「企画として実現化をリサーチし作品にリ
アリティーをもたらした」と思える。
その結果、一見荒唐無稽な作品の背景に信憑性を付加させる事に成功しており、登場する人物やガジェットに思い入れのあるファンを獲得出来たように感じる。
作中の映像も「朝日を背景に無骨なシルエットを晒すブルーサンダー」や「実際に飛行可能なブルーサンダーを投入したロサンゼルス市街上空での攻防戦」等といった設定のリ
アリティーを補完するに十分な物で、頭の中に違和感を感じる事無く見終える事が出来る優れた作品と思えた。
アクションを支える人物像も秀逸で「現役時代の自分を照らし合わせつつも管理者として主人公に対するブラドック警部(映画公開を待たず亡くなったウォーレン・オーツにはエンディングで追悼のメッセージが述べられている)」や「若さゆえの軽薄な部分が目立つがコンピューターや最新機器に精通し、勇気も見せたライマンドック」、「冷酷さと計算高さをちらつかせながらも主人公との確執を隠しきれないコクレーン大尉」そして「現実を知り、斜に構えつつも最後まで自分の中の正義に忠実だった≪世界一レイバンの似合う不良中年(笑)≫フランク・マーフィー」と「別れても好きな人!ばりに別居中にも関わらずマーフィーに振り回される(でも、まんざらではなさそう)ケイト」など、魅力的な人物像が作品に奥深さを与えているように見える。
万人に・・・とは言えないが、(興味の無い人を含め)一人でも多くの人に見てもらいたい作品である。