なんという記録だ。300人の
ジャズミュージシャンに3つの願いを質問し、それを記録している。短い答が雄弁に語っている。一流の
ジャズミュージシャンは一つ一つのフレーズにメッセージをこめるということに長けているのだ。一つのソロフレーズが語るメッセージと同じように、ここに記録されている言葉は深いメッセージを発している。
当然だけれど良いものは良い。JAZZ評論は出来ませんが、たとえば、エラやサラみたいなJAZZ本通りや、ナタリー・コールみたいな上手すぎるポピュラーでもなく、私にとって『歌のお姉さん』的気持ち良さです。ビリー・ホリデイも同じぐらい気持ちがいい。日本でいえば島倉千代子また、都はるみ の歌謡曲流行歌の気持ち良さとイコールかな。
タイトルから中身を想像すると肩透かしを食らいます。(「ヘレン・メリル・ウィズ・クリフォード・ブラウン」と
タイトルはそっくりですが、メンバーも選定も、そして雰囲気も違います。)こちらはスタジオに観客を入れて行なったスタジオ・ジャム・
セッションの録音。一枚はアルバム「ジャム・
セッション」(ダイナは一曲だけ参加)、もう一枚がこのアルバムとなりました。ただし、こちらも好演なのは間違いなく、ダイナ・ワシントンの魅力が全面に出たアルバムとなっています。
アップテンポでも、スローテンポでも、ダイナの切れとパンチのある歌声が気持ちいいです。まあ、これだけのメンバー(レギュラーに加えて、ローチ&ブラウン・クインテット)ですから、歌う方としても気分が盛り上がったことでしょう。
まず、アップテンポで歌われるLover Come back to me に圧倒されます。サラりと歌詞を歌い始めつつ、最後には熱唱という展開。その後、メドレーでスローものを挟み、ミディアム・テンポで歌うI've got you under my skin がやってきます。これが本当にいいんです。スタンダードだけど、完全にダイナのものになっていて、聴く側を飽きさせない好唱。「感情移入してどっぷり」とは違った、姐(あね)さんが一肌脱いだきっぷの良い歌といった感じですね。そして、再びスロー
バラードを挟み、最後はYou go to my head でまとめあげます。リズム乗り、気持ちの入れ方、上手いのは言うまでもないのだけれど、それ以上の何かが確かに存在することを感じさせます。
いわゆる黒人女性のボーカルとは違った、ダイナ・ワシントンならではの世界の広がるアルバムです。是非ともお薦めします。