〜知られざる作品も網羅した太宰治アンソロジー
名作選ではなじみの薄いものも、四つの視点で選んだ作品群に解説を付けて紹介。作品のそれぞれにもって掬すべき味がある、太宰治短篇アンソロジー。
泣ける太宰…恋ゆえに魔が刺した主人公『燈篭』、幼い頃いじめた女中が現れる 『黄金風景』、 『眉山』 『メリイクリスマス』 『津軽』 他……思わずぐっと胸に迫ってくる文章が多い。
笑える太宰…酒を飲み歌を歌いそれが本当に交歓だったのか『親友交歓』、新解釈と人生の真理を説く 『カチカチ山』、 『畜
犬談』 『美少年』 他……サーヴィス精神旺盛な太宰の得意とするところ、笑い名手の腕の見せどころ。
毒づく太宰…
芥川賞の選評に激怒した『川端康成へ』、いつの世にも官僚のヘラヘラぶりは庶民の敵 『家庭の幸福』、 『如是我聞』 『HUMAN LOST』 他……大袈裟に、必死に身も世もあらぬように懇願するだだっこぶり、誇張表現に長ける。
祈る太宰…幻想ならぬ幻聴文学『トカトントン』、結婚で自堕落な生活から抜け出そうとするが悲劇が訪れる 『人間失格』、『竹青』 『待つ』 他……元気と希望を与える太宰。笑いと泣きの次元を超えて「祈り」は真っ逆さまに「絶望」と隣り合わせ。
“太宰なんか嫌いだ”という、実は読んでいない人に、珠玉の作品の多様性を一覧できる作品のアンソロジー。