ルキノ・ビスコンディ監督の
ドイツ三部作といわれる、その一作目。
僕は、三作目の「ルードウィッヒ神々の黄昏」しかみていないけれど、ルードウィッヒを演じた個性派俳優、ヘルムート・バーガーがやっぱり登場していたので三作目とのつながりを感じた。しかも、やっぱり変態(笑)。いまだとちょっと普通に上映できないような少女愛や母子相姦などがでてくるうえ、最初はえらい情けないヤツだったのが、最後は突然ナチスの将校みたいになっている変化がおもしろい。
ストーリーは、かなりややこしい。
ドイツの巨大鉄鋼会社を経営するファミリーのお家騒動に、ナチスの突撃隊のヒットラーに対する謀反と、制裁を描いており、史実に基づいているところもあるので、ネット等で調べながら見るのをおススメします。でないと、多分なにがなんだかわからなくなると思う。
俳優さんたちですが、変態役のヘルムート・バーグ以外にも個性的な俳優がでている。お母さんのソフィー役の女優は、どうみてもニューハーフに見えるし、一族の会社を乗っ取ったフリードリッヒは、とても
ドイツ人に見えない器の小さそうな男、そして、アッシェンバッハ!この男はきわめつけにクールだ。ナチスにピッタリで、この男にナチの制服でにらまれたら、かなりこわい。
そして、なんといっても、「Feline(
猫のような)」という言葉がぴったりのシャーロット・ラン
プリング。若々しくてかわいく、そして神々しい。悪母ソフィーに、強制収用所おくりにされてしまうが、もっと登場してほしかった。第二作「愛の嵐」ではもっと前面にでてくるらしいので、是非みてみよう。
なんというか「やはりビスコンティやな」っと思わせてしまう重厚さでした。ヒトラーが台頭する虚虚実実の駆け引きの流れを知っていないとこの映画の面白さは半減するかもしれません。なぜナチス同士が殺しあうのか?って途中で訳が分からなくなる人もいるでしょうから。この事件で唯一ヒトラーを「おい」って呼べた同士(突撃隊のレーム)を抹殺してしまうことになります。まあこれで誰も気兼ねする人はいなくなったわけです。
ドイツ人の映画のはずが
英語ですし、スウエーデンの大女優イングリッド・チューリンからイギリスのシャーロット・ラン
プリング(この人この手の映画よく出ますね)、青年は
フランスの
ルノー・ベルレーでしょうか??俳優さんは盛り沢山です。ラストシーンは狂気ムンムンですね。ビスコンティはナチスを狂気と見たのでしょうか?
相続をめぐる家長的室内ドラマを背景に、
ドイツ鋼業界は本音を言えばナチスとの軍産複合体制の夜明けを待望している。
一方、財界やプロイセン伝統の
ドイツ国防軍にとってヒトラー子飼いの私兵「突撃隊」は目ざわりである。
新生
ドイツのために培ってきた協力関係も、ヒトラー政権が近づくほど煙たくなって罅割れが生じ、ついには粛清に至る。
こうした政治的妥協を巧みに用いたヒトラーの偽装的な中道路線の空恐ろしさを見事に描写した作品である。
この物語の底流には Ha'liebe すなわち憎悪愛がそこかしこに散りばめられていて、登場人物各々が未だ得たいの知れな
いナチスの魅力に撮り憑かれながら、性格的弱点にカンフル注射を打たれ権力に迎合していく小市民の傲岸さをヴィスコン
ティは喝破している。
ダーク・ボガードは、この作品の撮影前に言っています。「この役は魅力的ではない」そして、撮影が始まってからは、「シャーロット・ラン
プリングは今に大スターになる」と予言しました。
確かにもっともでした。この作品のフリードリッヒはまったく魅力的ではありません。ヘルムート・バーガーの映画だったのですから。主役には違いないものの、ベルイマン作品に常連のイングリッド・チューリンともども、おいしいところは皆バーガーが独り占め。ラストの死は哀れです。また、22才のラン
プリングの眼!すでに、あの眼はありました。そして、あっという間にスターに上り詰めました。ボガードの勘は見事に的中しました。
この作品で、ボガードは「ベニスに死す」での主役に認められるための、ステップを踏んでいただけなのかも知れません。