歴代の天皇における持って生まれた境遇は本当にさま
ざまであり、朝廷における中央権力というのは、必ず
しも「正義」と「邪悪」という単純ではないという事
を改めて認識するのだ。

古代から始代における「皇位継承」という複雑な問題と、
著者が本書の主題で取り上げている「怨霊」が、さなが
ら、学術報告書の様に、巧妙に記述されている。

特に、廃帝とされた無念の崇徳院と西行法師の深い悲し
みが、手に取る様に私のこころの中に伝わってきた。

著者の深い見識と緻密で見通しの良い明瞭な文章は、
とても好感を持つことができた。
歴代の天皇の苦悩が胸を締め付ける必読の一冊である。