「ハゲタカ」での鮮烈なデビューの印象から、真山仁は経済小説の旗手といった受け止めが目立つが、「ベイジン」以来、国際問題や政治をも題材としており、本作は、3.11以前の連載ということで分かるはずだが、原発と日本・日本人の関わりという点では、「ベイジン」の流れを汲むもので本来はあったのだろう。
本作は、冒頭に登場する30代の男女4人の動きで展開しているが、主役はカリスマ総理 宮藤
隼人と読まなくては、激しいドンデン返しの果てのラストからは何も読み取れないだろう。
登場人物の多くが類型的との認識は否めないが、こうしたベタな形で周囲を置くことで、宮藤の抱えるもの・抱くものの大きさ・深さが際立っている。混迷というか、転落した日本の宰相として、如何にあるべきか、本書は、くだらん書生論や現実の政治を批判するものではなく、リ
アリズムの中で宰相かくあるべきという信念を持った者をしての顛末を描いたことに意味があると思う。また、宮藤が足が不自由で杖をついているという設定が、ラストまで実に効果的に生かされているのも面白い。
私は雑誌連載時の本作を読んでいないのだが、権力・理念そして総理の座に強く固執する宮藤というのは、3.11以降の菅直人を意識した部分はあるのだろうか?今となっては微塵も感じようがないが、菅直人が総理の座についたときの瞬間的な活き活きとした姿と支持率の高さを思い出すと、本作には、菅直人という失敗作がうっすらとダブってならない。
3・11は本当に未曾有の災害でしたが
「日本文学」はむきあってきたのか?と
常々疑問でした。
「震災文学」と帯にあるものは「読んでガッカリ」小説ばかり。
そんな中、これは文句なく星5つ。
被災地に
神戸から応援で赴任した中年の小学校教師を主人公に
被災地の人々によりそった物語の連作です。
*「子どもはがまんなんかするな!」と子どもの不満を
壁新聞で発散させる主人公。
*児童を津波で亡くした親が、そのときの担任を問い詰める
そして、その場でシリウマにのるマスコミ。
*ボランティアと地元民とも確執。
*
神戸から東北へ
ノンフィクションでは描けない物語だと思いました。