昆虫写真家の、約50年のカメラマンとしての活動を振り返るエッセイ。
昆虫の生態を解説しつつ、撮影に際しての試行錯誤や失敗談、裏話、ビデオ撮影機器や医療機器なども取りいれた独自のカメラ・周辺機器の開発改良、撮影技術の工夫・確立などについて書かれた文章は、昆虫撮影への情熱があふれており、大変興味深く読めます。
アリの巣の全容を知るためショベルカーで4mの穴を掘ったり、こういう写真を撮りたいと目標を持ってから20〜30年かけてそれを実現したりと、紹介されるエピソードも印象的。
「諦める前に、まずやってみなければ、何も始まらない」「決定的な場面を物にするにはとにかく忍耐力が大事」など、エピソードとともに語られる言葉にも説得力があります。
2000年(この本の10年前)に発行された「栗林慧全仕事」(代表作を集めた写真集)にも、同じような読み物が30P弱載っていましたが、本書は小学校高学年からが対象で、よりやさしく読みやすく、より詳しく肉付けされた内容になっています。
本書の中で紹介される写真は、多くはなく、サイズも小さめで、「全仕事」で紹介されていたものがほとんどですが、「全仕事」発行の後で開発されたらしい「
アリの目カメラ(
アリの目線と同じかそれより低い位置!から撮影できるカメラ)」による写真が紹介されていて、感激でした。
エッセイの本書と、写真をじっくり見られる「栗林慧全仕事」。セットでお勧めです。