著者の阿刀田高さんは、いまさら紹介するまでもありませんが、1935年東京生まれ、
S.S.、いわゆる奇妙な味の小説、ミステリー、そして、阿刀田さん独自のダイジェストもの、などその作品は広範囲にわたり、
900編を超える作品を生み出しています。
阿刀田さんは、アイデアを求め、アイデアを拠り所にして人生、人間、恐怖、ユーモアを綴ってこられました。
そして、長年、これはあくまでも特殊な知恵で、小説家にしか役に立たないと思ってこられましたが、
数年前から、これ等の経験は広く現代のクリエーターたちに役立つのではないか、と思うようになり、出来上がったものが本書ということになります。
いわば、阿刀田さんの創作ノート、ネタ帳 のような本ということになります。
阿刀田さんは、先ず、目的に沿って要領よく特徴をとらえ、想像し、創造に結び付ける視点、
一事でいえば「ダイジェストの力」が備わっていなければならないと考えています。
そして、自作、「旧約聖書を知っていますか」、「新約聖書を知っていますか」などの自作品、池上彰さんのエッセイ
等 様々な例を挙げダイジェストの方法を示しています。
次は、ダイジェストの土壌から、いかにしてアイデアを見つけ出すかを、自作品を例に挙げ説明しています。
そのためには、阿刀田さんはアイデアをノートをとっておられます(B5判のノートを使用されているようです)。そして、それらのアイデアに登場人物やプロットが加わり、作品が完成することになります。
しかし、それだけではよい作品にはなりません。よい作品にするためには、プラス・
アルファの様々な知識、体験が必要になります。
それには、阿刀田さんの考える、テーマとモチーフ、ユーモア、奇妙なイマジネーション 等が必要になってきます。
話は、さらに読書、執筆作法にまで及びます・・・
ここまで手の内をさらけ出していいのかな と思いますが、阿刀田さんの創作方法が具体的に示され、非常に興味深く読ませてもらいました。
旧約聖書についてまったくと言って良いほど知識が無かった私ですが、この本はとても読みやすく、内容を歴史と絡めて紹介してくれるので物語を読むように楽しめました。本の流れもまとまっていて2日でいっきに最後まで読める面白さでした。そしてこの本を読んで得た結果はかなり有益なもの。いろいろな地域、分野に影響を与えている旧約聖書の世界を知ることで現代の文化にたしいて今までより理解が深まりました。
私は海外旅行やTVドキュメンタリーで様々な文化に触れるのが大好きなのですが、この本で得た知識で更にそれらが楽しくなりそうです。
ちなみにこの本を読んだ後に『新約聖書を知っていますか』を読んだのですが、この順番はお薦めです。
珠玉の短編集.物語は最後の最後でどんでん返しを迎えることもあれば,淡々と終わるものもある.ブラックなものからミステリアス,ファンタスティックなもの等中身は様々.お試しあれ.