勿論好みによって多少の違いはあるだろうが、日本の(アングラ・)フォーク、つまりはURC〜ベルウッド・レーベルのラインの代表格といえば、岡林信康、五つの赤い風船、高田渡、加川良、友部正人、あがた森魚といった名前が挙がる。しかしこういった面々は個人でひとつのジャンルというか、フォークというスタイルに収まりきらない存在感を持つ、言ってみれば或る種の異物である。“フォーク”と言った時に多くのひとが思い浮かべるイメージにより近い音……典型的、という表現が悪ければ“フォークの粋”を体現しているのは、実は及川恒平、なぎら健壱、そしてこのいとうたかお、といった二番手のシンガー達ではないだろうか。
ライナーを読むと、代表曲「あしたはきっと」について、“当時のフォークのスタンダードのような存在で、まだ録音すらされていないのに、人から人へと歌い継がれていた”と説明されている。なかなか凄い話だが、実際のその楽曲は割となんてことのないラヴ・ソングだったりする。しかしまさにその、歌い手を選ばない“なんてことのなさ”故に「あしたはきっと」はスタンダードたり得たのだと思うし、その点はいとうたかおという音楽家自身にも共通するポイントであろう。
アコースティック楽器中心の、歌を邪魔しないシンプルなアレンジ。技巧に富むわけではないが、奇を衒わない誠実な歌い回し。日本語による歌詞の、判り易さと意味不明さのバランスも良い塩梅である。きっとフォークのリスナーならこういう歌を拒否出来ないし、初心者にとっても岡林のプロテスト・ソングやあがたの大正浪漫よりとっつき易い。良くも悪くも最大公約数的。
一声聴くだけで顔が浮かぶ類の強烈な個性ではないし、天才ソングライターとも呼べないだろうが、こういうひとがシーンの屋台骨を支えているからこそ、個性派も安心して逸脱して行けるのである。
若干感じられる力みも決してマイナスには響かない、日本フォーク界の良心、当時23歳による気持の良いデビュー作。
この「伝説のフォークライブシリーズ」は、VOL.1~VOL.3まで3枚発売されていますが、私は3枚とも買いました。いずれも2時間程度の内容で、しかも各アーティストの代表曲が1999年当時のライブで見れます。70年代のフォークが好きな方なら3枚とも「買い」だと思います。
このVOL.1ですが、高田渡編は、
京都の磔々で収録されています。高田渡がメインの曲が10曲、いとうたかおがメインの曲が3曲、シバが2曲、村上律が1曲、中川イサトが2曲、中川五郎が2曲という構成です。
高田渡のパートは、映画「タカダワタル的」を思い出させてくれます。
ステージでのしゃべりも入っていますが、ちょっと聞き取りにくい感じです。
三上寛編は、東京でのライブで、一人でギター(アコースティックではない)を弾きながら、「夢は夜開く」や「パンティーストッキングのような空」など彼の代表曲5曲が収められています。
元々テレビ番組用のものですので、間にインタビューが入ったりしますが、そういう場合にありがちな、曲が途中で途切れることはなく完奏状態で収められています。その点でも好感が持てます。