十数年前に、Numberのビデオで出ていた開高釣りシリーズの中の1本。他が各国釣り紀行のドキュメントであったのに対し、この内容は(
アラスカでのサーモンフィッシングでのロケではあるものの)アフォリズムビデオとでも呼ぶべき1本であった。各所に散りばめられた珠玉の言葉の数々。特に「ナースログ」の言葉の重み。音楽も抑制が効いており出しゃばらない。Numberのシリーズ中これのみDVD化されたのもうなづける。惜しむらくはDVD化に際して、
ボーナス映像も追加して欲しかった。是非、夜半に独酌しながらの鑑賞を。キラ星のごときフレーズが萎びた心の奥底に堆積・発酵する。開高ファンでない方も必見。五つ星。
開高の作品は、絶妙なバランスにおいて成り立っている。緊迫した筆致とどこかほのぼのした人の情景、ばらまかれる死と尿のにおいのしそうな食のエピソード、はりつめた一瞬とどこにも出て行けない持続する時間。これは、もしかすると背景とする60年代の特徴だったのかもしれない。このバランスを失う前の開高作品がたまらなくいとおしい。