心待ちにしていた短編集です。
あの名作「夜の果てまで」の原型となった、２０年前の「舞い降りて重なる木の葉」が収録されているし、書き下ろしの作品もあり、２０年という時の流れのある作品集なのです。
２０年という歳月の幅がありながら、盛田作品にはぶれない魅力があります。

辛く切ない状況におかれる主人公が描かれる事が多いのですが、逆境に荒々しく立ち向かうわけでなく、前を向き、一歩一歩しっかり歩いて行く。主人公が静かに強いのです。
殊に、女性を描くのがとても上手い作家だと思うのですが、読んでいると、いつの間にか作品に入り込んで、主人公と心を同じくしてしまうのです。
読み終わった時には、主人公にそっと背中を押され、知らない間に前を向いている自分に気付くはずです。

男と女が求め続ける、そして、人になくてはならないモノが、この本の奥深くにはあります。それは、炎がゆらゆらと燃えるように、たゆたっているように思うのです。

４０代女性ですが、「なるほど、不倫関係というものはこんな具合に出来上がっていくのか。」と、身近で起こってもありうるのだなぁ、と思いました。男性にとても正義感があり、家庭を大切にしているので、こんなダンナだったら、
良い方向へ物事が行くのだとしみじみ感じました。心に残る小説でした。