小学生のころ、「サーキットの狼」にはまり、スーパーカーブームをリアルタイムで体験した池沢ファンです。
テーマとしては、レースを中心に、主人公が成長してゆく様を描く、池沢ワールドそのもの。
自動車レースを主軸に置いた小説は希有で、「サーキットの狼」に通じるものがあります。
池沢先生でなければ、書けない作品といって過言ではありません。
池沢漫画がテキスト化された感じなので、文字を読んでいるだけで、池沢先生の絵が頭に浮かんできました。
過去の池沢作品においては、主人公は二枚目(あるいは2.5枚目)でしたが、今回はルックス的には、チビでサル顔の完全に三枚目。
しかも、レースでは常にビリを走る、最も遅い男。
「サーキットの狼」の風吹裕矢なら最初から才能があり、ライバルとしのぎを削りプロレーサーに成長する様が描かれますが、
新機軸の「三流レーサー」では星光速はどんなに頑張っても実力では速くなれない男。
しかし、星光速はどんなに遅くとも、メゲナイ!!!
前向きな主人公が、「夢を諦めない重要さ」を訴え、
現代の夢を持てない若者や、ストレスを抱えたビジネスマンにも、夢と勇気を与えてくれるものと感じました。
また、キャラ設定も絶妙で上手い。これは池沢先生の天性の才能ですね。
レーサーなのに連戦連敗、しかも三枚目、という、ありえないほどユニークな主人公設定は、目から鱗でした。
しかも、池沢漫画同様、脇役も各キャラが、きちんと立っている。
まさに、漫画をテキストに置き換えた池沢ワールドが展開されて行きます。
蛇足ですが「ベストカー」誌上に「スーパーカー値千金」を連載していた時も、キャラの巧みさには驚かされました。
さて、ストーリーは商品説明にもある通り。
主人公、星光速はサル顔のドンガメレーサーにも拘らず、スポンサー獲得というビジネス面では天才的才能を持った男。
「金でシートを買った」とやっかまれ、金目当ての女が近づいてくる。
更に、レーサーとしての出場権を剥奪されそうになり……
池沢先生の周囲に実際に居そうなキャラたちばかりです。(笑)
結末は、読んでのお楽しみです!
レースシーンは、池沢先生本人がレーサーであり、リ
アリティ溢れるものです。
息を呑む展開に、手に汗を握ります。
お約束の、エッチなシーンも盛りだくさんです。
以上、池沢ファンなら、買って損はない、いや、買わなきゃ損の一冊です。
続編にも期待!
小学生の頃、夢中になって読んだ「サーキットの狼」がカラー化されて復刻されました。いまでは懐かしいロータス・ヨーロッパや
ポルシェ、
フェラーリ、そして
ランボルギーニなどなど。久しぶりに興奮して読み返しました。できれば、公道編だけでなく、全編カラー化して欲しいですね。