「広告マンとしての成功を夢見るビクターは、自分を売り込むため、大手広告界会社・ブレインストームへ向う。誤魔化しながらもなんとか社内へと潜入していくが…。」(「DVD NAVIGATOR」
データベースより)という売り文句を読んだとき、一番最初に頭に浮かんだのはマイケル・J・フォックス主演の「摩天楼(
ニューヨーク)はバラ色に」という映画でした。ごく普通の若者が大手企業にもぐりこんで、出世街道をのぼっていくというサクセス・ストーリーを描いた喜劇…。
しかしこの「コマーシャ
ル・マン」は少しばかり趣が異なりました。出世するために手をつけた方策がやがて恋人との仲を危機におとしいれることになります。会社の中でタッグを組んだ先輩格ディレクターとの確執と不思議な友情もからんで、主人公を一筋縄ではいかない状況へと追い込んでいきます。人との絆を選ぶか、それとも企業内での成功を選ぶか、という意外と骨太なテーマを扱っているコメディです。
それにしても、どうしてあんな幕切れにしてしまったのでしょうか。それはないよ、と思わず叫んでしまいました。しかし、このDVDには特典映像としてもうひとつのラスト・シーンが収録されているのです。最終編集版のラストに比べるとこの特典映像のほうは実に平凡といえるかもしれません。ですが、見る側の生理としてはこの平凡なラストのほうが心落ち着くと私は思います。最終編集版は見る側が屋根にのぼった後にハシゴをはずすような、宙ぶらりんな思いが残ります。
ハリウッドでは公開前に二つのエンディングを比較するための一般試写をやることがたびたびありますが、この映画でそれを行なったなら断然特典映像の側が選ばれたことでしょう。
ラストが特典映像版だったら星4つです。