![]() 犯人たちの部屋 ミステリー傑作選 (講談社文庫) |
このシリーズも本編だけでも50巻を超えました。毎回毎回素晴らしいミステリーの短編が紹介され、非常に楽しみなアンソロジーになっています。今回も、粒ぞろいの10作品が所収されています。
「ラストドロー」(石田衣良)「蕩尽に関する一考察」(有栖川有栖)「招霊」(井上夢人)「盗まれた手紙」(法月綸太郎)「瑠璃の契り」(北森鴻)「死者恋」(朱川湊人)「絵の中で溺れた男」(柄刀一)「走る目覚まし時計の問題」(松尾由美)「神国崩壊」(獅子宮敏彦)「Y駅発深夜バス」(青木知己) どの作品を取っても本格ミステリーの楽しさを満喫させてくれます。 個人的には、「瑠璃の契り」の雰囲気が大好きです。 「蕩尽に関する一考察」「走る目覚まし時計の問題」の犯罪ではない軽さもいいです。 どの作品を取っても実に印象的な作品ばかりでした。 |
![]() 密室キングダム (光文社文庫) |
五つの密室事件が扱われている本作。 第一の密室は、いわば“三重密室”。その最終ラインは、出入り口のそばに居た 人々による“視線の密室”なのですが、犯人は、心理的仕掛けをほどこすことで、 思いもよらない密室からの脱出方法を隠蔽しています。普通なら禁じ手と言える その脱出方法を成立させるために、“三重密室”を構成することでカムフラージュ しているのが秀逸です。 第二の密室は、茶室の襖に、木の枝とはさみを刺すことで構成した“和の密室”。 形態だけでなく、動機も他の四つの密室とは異質で、その切実さが胸を打ちます。 第三の密室は、犯人が構成した密室の外側に死体があるケースで、密室 内部に容疑者が倒れているという、カーの×××的趣向も採られています。 よく練られた独創的な物理トリックが用いられており、感心させられました。 第四の密室は、椅子に縛られた被害者を残し、直前 までいた犯人が、密室から忽然と消す、という趣向。 古典的な小道具が用いられているのですが、 それを気取らせない隠蔽の仕方が秀逸です。 第五の密室は、暖炉に頭を突っ込んだ謎の男 を残し、犯人が密室から消失するという趣向。 密室の扉に貼られていたイシスの紙が、装飾の意味だけでなく、脱出する うえで、実効的な影響も捜査陣に及ぼしていたというあたりが素晴らしい。 真相は、第一の密室と同様、普通ならアンフェアのそしりは免れない代物なのですが、 「顔を焼かれた謎の男」といった存在を導入することによって、ギリギリのところで反則 にはしていないのがお見事です。 本作は、圧倒的なボリュームと大時代的な世界観で、明らかに一般受けはしない でしょうが、愚直なまでにトリックとロジックを追究する真摯な作風は、近年、希少 であり、評価されるべきだと思います。 |
![]() 御手洗潔対シャーロック・ホームズ (創元推理文庫) |
ホームズパロディ&パスティッシュは内外に数多かれど、まあ大体がホームズとワトスンのやおいか、ホームズは実は〇〇〇だった、という水準に留まっている。要は原‐テクストと戯れている以上のものでしかないのだが、本作の場合、従来のホームズパロディというほかに、島田荘司の御手洗潔もののパスティッシュが併せて目論まれている。ホームズパロディに島田作品の文脈を引き入れるということ、これは実は従来のホームズもののスタンスにある種の屈折を強いるものだ。 というのも、島田には、『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』というホームズパロディ&パスティッシュの名作があるからだ。この作品、単なるパロディというに留まらない、とてつもない起爆力を内包した小説なのである。これを読む前と読んだ後では、何の誇張もなく「世界」が変わる(笑)。ここで示されたホームズ像は、原‐テクストに確実に食い込むわけである。上記の「屈折」というのは、こういうことなのだ。 これにあたり、作者が実際にどういう処理を行ったかは、是非作品を読まれたいが、具体的には現代日本にホームズ&ワトスンが出現するのだ(笑)。このアクロバティックな所作により、「御手洗潔対シャーロック・ホームズ」が華麗に実現する。個々の短編のトリックメイキングに関しては、言うことナシ。素直に幻惑されて下さい。 本作は先人の業績に対する見事なリスペクトだけれど、島田荘司によるあとがきは、全てのファンに対する格好のプレゼントだ。読んで悶えよ。 |
快閃動畫族-「穿著神裝的獵人」
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