『COMICアレ!』(マガジンハウス)で1996年に連載され、マガジンハウスから1997年に刊行された単行本の再刊本。装丁も青い。
正直言うと、あまり期待しないで読み始めたのだが、途中からグングン惹き込まれてしまった。
日本海に面した田舎の街の女子高を舞台にしたお話。連載されていたのは1996年だが、作者の年齢と、物語に登場するちょっとした小道具(レコードやカセットテープ)を考えると、80年代後半から90年代にかかる頃の話なのだと思う。(女子高の)同級生に恋してしまった主人公の女のコ(作者の分身?)の高校3年の1年間の揺れる心情を坦々と描いている。切ない、というか、苦しい、というか…。幼いということの痛々しさが非常にうまく表現されていると思う。ちなみに、作者初の長編だそうだ(長編と言っても、たった10話に過ぎないが。しかも1話が短い)。
この人の漫画を読んだのは初めて。何というかガロ的だなぁと思っていたら、本当に『ガロ』でデビューした人だった。ほとんど背景を描かず、露出オーバー気味でコントラストを高めた絵柄が、青春のもつ不安定な危うさをうまく表現しているような気がする。動きの描写はほとんどなく、影絵のような印象。静寂に支配された世界。どうも現実感がなく、おそらくは作者自身の想い出を抽象化して描いたものなのだろうと思う。
独特の雰囲気のある作品で…、漫画であることが不思議な気がした。通常の漫画同様、フキダシが描いてあってその中に台詞が印刷されているのだが、何故か違和感がある。台詞が音声として聞こえてくるべきもののように感じた。
多才な才能を秘めた作者のようで、面白い人を見つけたと思う。
とある映画DVDでこの映画の予告を観て、気になったので観てみた作品。 原作は読んだことが無かったけれど、原作者(魚喃キリコ氏)の作風から何となく内容や雰囲気を想像していた。 その想像からは大きく外れていない内容でした。基本的に女性向けじゃないでしょうか。
過食と嘔吐を繰り返すイラストレーター、塔子 (一番共感してしまった…) 普通のどこにでも居るカワイイOL、ちひろ (実際に周りに居たら、イラっとするタイプかも…) 恋がしたいといつも思っているフリーター、里子 (幼過ぎる容姿に、ビールやタバコのシーンでギャップを感じた位) 好きな男に色んな嘘をつきつつ踏み出せないホテトル嬢、秋代 (棺桶で寝起きしている所がイイ)
共通しているのは、「愛を求めている」と云う事。色んな形の、愛。
だからこそ作品の中では淡々と日々と生活が流れ、出演している女優さん達にも輝きが無いのかも、と思った。 物語の結末に近付いて、それぞれの叫びが伝わった時に、彼女達に対して何とも言えない愛おしさを感じた。 彼女達は、普通にその辺にいる女の子であり、自分自身でもあるのかなと感じた。
4人がそれぞれの答えを出して、一つ階段を登った所でこの映画は終わる。 同居している塔子&ちひろ、バイト先?が同じ里子&秋代。 本来接点が無い2組達が、最後にほんの少しだけつながりを持つ。 すっきりしない終わり方の映画も多い中で、この映画は比較的すっきりした気分になる。
日常生活に不満や面白いことが無いなーと感じている女性には、オススメかも知れません。
何が楽しいわけでもなく、かといって嫌なことが続いているわけでもない。 可もなく不可も無い日常。 でも、なにかが足りなくて満たされなくて、それでも上手に表面上坦々と日々の生活を繰り返す。 そんな毎日を送っていたときにこの本に出会いました。 どの主人公にも自分にあてはまる部分が多々あり、その度に胸が痛んで、 「なんだ、私こんなことも思ってた」 ってまるでこの本が私の言葉を代弁してくれてるかのようだった。 読み終わる寸前には涙が溢れて、読み終えてからしばらく涙が止まらなかった。 でも、泣けてとてもすっきりしました。 ああ、泣きたかったのか、私、と。 この本に今出会えてよかったです。 心のもやが晴れて、すっきりしました。
初期より今の作品の方がなお好きなあたしだけど、それでもこの作品はキリコさんの作品の中でもある種異色で、そして忘れられない。 キリコさんの描く世界は、男女のギリギリな、あるいはすでに飛び越えちゃった、赤裸々で現実的で切なくかつ優しい恋や愛の姿。 そして、「これはあたしだよ…」って思ってしまうくらい生々しく、ヒトの弱さや強さを容赦なくえぐりきる。 そのシンプルな描線で。 そんなキリコさんの世界において、オンナノコ同士の恋(…なんて、カンタンに言っちゃっていいのかな…汗)を描いたものは珍しいのだけど、あたしはこれが一番好き☆ いつものように切なくて痛いんだけど、なんか強くなれる。 不思議です。
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