個性的で多国籍な登場人物達は年齢や人種を問わず対等で、
精神世界の映像化、その中で行われるサイバーパンクな闘いと
現実世界での肉体を伴ったバイオレンス、
一見非情で冷徹な闘いの中には各々の思惑（自分のため、家族のため、
仲間や友人のため）が込められている…と読了してから振り返ると、
このお話がいかに浅田寅ヲとの親和性が高かったかを
改めて思い知らされるような気がします。
意図的に寄せていった部分もあるのでしょうが、
原作付きより浅田オリジナル作品が好き！という方も十分に楽しめる、
浅田寅ヲテイストの高い作品だと感じました。

いとうせいこう氏の原作も既読なのであらすじは理解していましたが、
オリジナルの要素や登場人物がいい具合に全体の流れを引っ掻き回して、
結果「最後までどう決着するかわからない」という緊張感を
保ちつつ読むことができました。
『洗脳』という要素が非常に重要なストーリーだけに、
「この人が洗脳されていたらどうする？」「この人は本当に味方か？」
等々、警戒しながら読むのもスリリングで楽しいです。

絵柄に関しては、確かに一部顕著な変化があります。
漫画的というか、眼が大きく顎が小さく、現実的な人間の顔立ちからは
以前より離れた印象です。
ですがそれはこの作品を引っ張っていく解体屋やソラチャイ達が
表情の変化と表現が激しい人物であることも関係しているのかな、
と感じました。
（年配の人物や表情の変化が少ない人物には絵柄の変化があまり
　見受けられないようなので）

総合的には、それ自体が素晴らしかった原作の世界を忠実に再現し
視覚化するのではなく、浅田寅ヲテイストをふんだんに取り入れて
再構築された、とても完成度の高い作品だったと思います。

色々と書いてはみましたが、読み終わった感想としてただ心から
シンプルに「面白かった、読んで良かった！」と思える作品でした。
この２人の原作・作画（兼アレンジ）でもう１作ぐらい読みたいです。

ゲームのことは全く知りません。
が、浅田寅ヲさんのファンなら買って損はないです。
浅田ワールド全開で、繊細な作画と、数回読み直さないとちょっと理解できない（一応褒め言葉です）ストーリーという味のある作品になっていると思います。
原作（ゲーム）のファンの方たちには不評のようですが、早く続きを読みたいですね。