400年の眠りから覚めた無敵の超人「鉄人騎士」は、その心の無垢さゆえに、ジェームスの悪のささやきを信用してしまう。善悪の区別のつかぬ赤子のような鉄人に、太郎の声だけが、真実を伝える事が出来るのである。不敵なジェームスの策略に、踊らされる鉄人騎士。少年ジェットの正義の声は、鉄人には、届かない。唯一の弱点に、ジェットのスーパーコルトが火を噴いた。傷を負った鉄人は、自分の故郷「魔の山」に逃げ込んでしまう。全ての謎が解けた時、鉄人に真の微笑が戻ってきた。そのいたいけな鉄人の「イーヤンプー」と叫ぶ姿はもう二度と見られない。幼い頃に見た、かすかな鉄人の記憶は、この鉄人の心の優しさにあったのだと思う。秀作である。忘れられない。
著者の「赤胴〜」と「ジェット」は著名だが、「コンドル・キング」を知っているひとは少ないだろう。
トランプカードを武器に使ったヒーローで、私は一部しか読んだことがないが、好きな作品だった。
著者の
タッチはいかにもというマンガのものであり、デッサンがしっかりしている割には結構デフォルメされている。
だから、マンガ
タッチが好きなひとにとってはたまらないだろう。
「コンドル・キング」以外はテレビドラマ化、テレビアニメ化、映画化されている。
「ジェット」のドラマは再放送、「赤胴〜」のアニメはリアルタイム、映画版はテレビで見た。
いずれも原作の味をそこなうことなく、独自のものをうまく出していた。
いわゆるヒーローものが少年マンガの全盛期だったころ、著者は活躍していた。
だから著者の作品、特に長編はヒーローものが多いのだが、ノンシリーズの短編のほとんどは今では読むことができない。
かろうじて角川ホラー文庫「闇の画廊」に一遍が収載されている。
著者のマンガは、しばしばグロい場面がある。
しかし、著者の
タッチで描かれると、それがちっともグロく感じない。
だからストーリーとしては、「ジェット」も「コンドル〜」も、当時としては結構冒険している部分がある。
直接的な描写こそほとんどないが、もし他のリアル描写の得意なマンガ家が同じものを描いたらと思うと、著者はその絵柄でかなり得をしているものがある。
いや、その絵柄を利用して、ストーリーで冒険を試みたのだろう。
ドラマ版「ジェット」でも、けっこうグロいものがあった。
確か宇宙飛行士が宇宙病にかかり、怪人になる、という設定のものだった。
今ではとても放送できないような内容だが。
なつかしいミラクル・ボイス。
「う〜や〜た〜!」と随分練習したものだった。
もちろん、塀は倒れず、木も折れたりしなかった。
この作品「
紅さそり」は、少年ジェットの中でも出色のできである。当時の他の作品にも共通するが、筋の進め方、展開の仕方が複雑で大人にも楽しめる要素を十分に備えている。(例えば矢車剣ノ介、七色
仮面などの筋運びは素晴らしい)また、この「
紅さそり」は、当時子供だった私にも十分に不気味な雰囲気が分かり、今でもその記憶が息づいている。特に荷蛭役の高田の演技は、それを象徴している。この作品前までは、武器として「スーパーコルト」しかなかったのであるが、この作品でジェットは「ミラクル・ボイス」を身に付けることになるのである。特に丸目との最後の死闘にこの武器が炸裂する。まさに血湧き肉踊る瞬間であった。涙ものである。