この映画はいつも仕事で疲れている人には休日に、全く頭を使わないで、ありえない、チープな作りの結婚詐欺師の物語としても楽しめるし、又、真剣に見れば、深い人間対人間の心理劇としても楽しめる多様な見方ができる稀有な映画だと思う。これを単なるチープな結婚詐欺の話として片付けることは簡単だが、その裏側には、悪意の所在も曖昧で、夢の中に生きているような、クヒオ大佐と、うすうすありえない嘘だと気づいていても、自分の境遇を一時でも夢の世界へいざなってくれるくクヒ大佐を信じたい、信じ続けたい、女性たちの、悲哀と希望に満ちた物語である。又、この映画ではあえて、物語の組み立て、細部描写にこだわることは避け、かなりチープな表現に徹しているが、そのチープさが実は人を信じさせる力を少しも弱めるものではないと言うことが解る。チープな表現とリ
アリティは両立するのだ。人は何かを信じたいという潜在願望が常にあるが、その対象は、決して小さな事では満たされず、より大きな、ありえないような大きな物を求めているのではないだろうか。それだから、ありえない話が真実味を帯びてしまうのだと思う。この映画を一度見てつまらなかった人は、もう一度、この映画を見て欲しい、繰り返し見ることで今まで見えなかったものが確実に見えてくると私は思う。
西アジア各地方の音楽を研究・精通している音楽学者たちによる,意欲的なアンソロジー。「アラブの音文化」という
タイトル通り、やや「言葉」「節回し」というものに重心が置かれていて、音そのものの在り方が「言葉に従っている音楽」というくくりに結論上なり気味であるが、8分の29拍子といった、言葉の朗詠を考えると説明のつきやすい世界についてや、ユダヤ音楽に残る節回しの共通性、
ジャズやバルトークへの接点もちらりと触れられていて、入口としていろいろ触発させられる専門書です。音楽についてはCDやネットで別に調べないと、たとえば「アンダルシア音楽」が耳や目で体感できるか、やや不満でしたので(youtubeや専門雑貨サイトで閲覧・入手は可能なようですが)☆4つとしました。「言葉」に関しては必要な参考文献は各ページの下にありますので、そこから追って行けます。追伸:姉妹編で「東アジアの音楽」も出来されると嬉しいですね!