ネオレ
アリスモ時代のフェリーニが真の意味でのフェリーニ色を表面に出すようになった秀作が、この「魂のジュリエッタ」だと言えるでしょう。
様々なファンタスティックな映像美と魅力的なキャラクターの登場、そして何よりも監督の個性的な表現力、これら三拍子揃った素敵な作品です。
この後、「サテュリコン」、「カサノーヴァ」と監督の頂点を極めた傑作が産み出されていくことになりますよネ。チネマ・ファンなら「一見の価値
アリ」と云うべきお薦めのヴィデオです。
’60年に発表されたフェリーニ監督による作品。退廃的な映像と軽快なリズムのオルガン・
ジャズとの対比が印象的です。
フェリーニ初のカラー作品だけあって気合いが入っていたのか、とにかく色彩感覚が強烈でクラクラする作品。内容的には、夫の浮気に苦悩する中年の妻の精神描写を、フェリーニ特有の絢爛豪華な映像詩で描き出したものなんだけど、ゴージャスな映像美が主人公の孤独を物凄く際立たせている点が、他のフェリーニ作品と違って特徴的だと言えるかもしれない。ラストでジュリエッタ(主人公の名前であると同時に、妻のジュリエッタ・マシーナが重ねられている)を開放してあげてはいるんだけど、基本的に寂しい映画なんですよね。(実際、本作撮影中にフェリーニとジュリエッタは別居し、後に離婚した。なお、本作撮影時、カトリック国の
イタリアでは離婚を認める民法改正を巡って論争があったので、この作品のテーマは
イタリア国民にとって非常にタイムリーなものでもあった。カトリックへの言及シーンが多い理由の一つもそこら辺にあると思う。)
それにしても、前作「8 1/2」を挙げるまでもなく、他作品の主人公の男達が女達と奔放に遊び回る一方で、本作の主人公は結局ハジけることもできず鬱々と狂気を垣間見るという設定が、ジュリエッタ・マシーナという女性に「純粋さ」を求め続けたフェリーニらしいというか。そういう身勝手さも含めて、やはりこの監督の才能は素直に男の欲望を描いた時の方が輝いてる気がするんですよね。