昔DVDの同BOX出た際に買ったのだが貧困故売ってしまい、10年振り位にブルーレイで再会。
やっぱりレンタルでは見る気にならないのだよね。買って観ないと絶対寝ちゃうし。
でも画像ってそんなに上がってない気が。「あれ間違えてDVDの方買っちゃった?」って確かめたりして。
陽炎座のあの我慢大会みたいな歌舞伎シーンの後の舞台が崩れ落ちるシーンや
ツィゴイネルの生と死の狭間のような鍾乳洞のシーンなどを高画質で堪能したかったのだが
スタンダードサイズの画面でイマイチ迫力に欠けテレビ放送を見てるようでした。
ホントはなくてもいい夢二だけが画面いっぱいに結構美画面だったのがさらに残念。
あと特典が殆どない。まぁこの清順作品の場合、作品そのものを体感すればいい訳で
解説やらメイキングなんかでこねくり返すのもんは正直いらないとも思いますが。
ジャケットとかやっぱり恰好よく風格あり本棚に収まり具合がとても良いので今度は
売らないで保存しておこうと思う。
ありました。
それは、作家晩年の心境を、特にその「負」の側面を映画がどのように表現するのか、ということでした。
「夢」の兵士の亡霊の延長を予想していたのかも知れません。
あるいは、日本郵船の公式
礼状を委託されて作っていた、という作家の実務者としての側面を予想していたのかも知れません。
しかし、そうはなりませんでした。
そうではなくて、ここには老いの受容が認められます。
この美しさは無類のしずけさをたたえています。
家の庭に訪れた子
猫が柄杓の柄にじゃれる様から始まりますが、ここからもう
猫への、ノラへの愛が溢れています。百けん先生は、ノラがご飯を食べるようす、寝ている様子、しっぽの形、あくびや伸びまで、些細な様子を観察し、日々のノラとのやりとりを記していますが、その眼差しはそれはそれは温かく、おかしくて、読みながら何とも言えない優しい気分になります。
ノラがいなくなり、最初の最初のうちは朝も夕もノラを思い出して泣きくれる百けん先生の姿が可愛らしくて「ふふ」と笑ってしまう余裕がありますが、少しするともういけない。百けん先生の悲しみにこちらもとっぷり浸かってしまい、一緒になって「ノラや、ノラや」と泣き続けることに。明日は帰ってくるかしら? あと少ししたら戻ってくるかしら? そんな思いでページをくり進め、読み終わったあとも『ノラや』の世界から抜けることができずに「ノラや、ノラや」と涙が止まりませんでした。
タイトルから最後の1行まで、愛がつまっています。
胸にぎゅっと抱きしめたくなるような、とても素敵な本です。
ちなみに私は特に
猫好きというわけではありません。
この本に「
猫好きのための本」などという安易な枠は付けて欲しくないなあと思います。