価格・入手性を考えるととてもお得な一枚です。
音質に関しての論議がなされているようですが、両者を聞き比べたところ、このアルバムはイコライザーやエフェクタなどを若干かけて現代でも聴き応えのある音に
仕上げており、対して過去に出たアルバム(G.M.O.版)は原音を忠実に再現しています。
ゲームミュージックに限りませんが「原音忠実派」と「加工容認派」は数十年の昔から常に対立しており、こればかりは個人の趣味としか言いようがありません。
旧「アクトレイザー」をアルバム化したG.M.O.でも、例えば「ダライアス」で「アーケード版と全く音が違う」などと論議が起こりました。これは元のアーケード版筺体がボディソニックなどを使用していたためで、それに慣れたプレイヤーが、素直にステレオ音源化されたアルバムに批判を浴びせたのです。これはアーケード版が「加工された音」、アルバムが「元来の音」という、今回とは逆のパターンです。
(もっともサイトロン版「レイフォース」などのように、本当にアーケード版と音がまったく違うこともあります、余談)
話題がそれてしまいましたが、このアルバムに収録されている「アクトレイザー」に関して言えば、若干かけてあるリバーブは原音派には「音の篭り」以外の何物でもないでしょう。音圧の増強も、もともとあったノイズを際立たせてしまうだけにしか聞こえないかもしれません。
まずは、試聴してみてください。「これはすばらしい」となれば、このアルバムは文句なくあなたの宝物になるでしょう。
しかし、「これは違う」となったならば…これまで通り、G.M.O.版を探される(聴かれる)ことをお勧めします。
『イース』 『ソーサリアン』 『ロマンシア』 『シェンムー』 『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』 『カルドセプト』
『湾岸ミッドナイト MAXIMUM TUNE』 等々、数々のゲームミュージックを手がけてきた、古代祐三氏の作品の中でも、
個人的に随一の出来に挙げたい『アクトレイザー』を、和田薫氏がオーケストラアレンジしたものです。
既に発売されている、『アクトレイザー』オリジナルサウンドトラックと基本的に同曲で、
『Opening〜天空城〜BLOOD POOL〜CASANDORA』 『Intermezzo』 『FILMOA』 『IntermezzoII』
『AITOS〜TEMPLE〜降臨〜世界樹』 『IntermezzoIII』 『PYRAMID〜MARANA〜静寂〜NORTH WALL』
『人々の誕生〜捧げ物』 『魔獣現る〜強敵〜
SATAN』 『平和な世界〜ENDING』
の10曲が収録されています。
名曲揃いなのは言うまでもありませんが、深き荊の森の戦いを描いた『フィルモア』は
攻撃的・尖鋭的だった曲調ががらりと一変し、緩急のメリハリがついた、古代の森林の美しさを描いたものとなっていたり、
『人々の誕生』をアレンジした『インテルメッツォII』は、古代ギリシアの伶人が竪琴を奏でるような哀切さを有していたりと、
別種の興趣がある美しい曲に生まれ変わり、原曲と比較して楽しむ事ができます。
中でも最高の出来は『人々の誕生〜捧げ物』で、総てが薄明であった開闢の時代、
自然の脅威の中細々と、だが力強い生活を営む人々の暮らしぶり、繁栄、生と死、世代の交代、神への祈り、
夜の訪れ…などを想起させる、深みと崇高さを持った必聴の価値ありの名曲になっています。