この全集は作品ごとに定評ある横尾忠則氏の挿絵が効果的である。
本編に加え、「乱歩文学の魅力」と題し、原卓也氏の解説評論。作品解題として中島河太郎氏の解説付きである。
全編をわたしは読んでいない。「虫」「押し絵と旅する男」と全集第4巻の殿を飾る「盲獣」を、ニーチェ流に再び
はじめて読んだのである。
「押し絵」はプラトニックフェチの最右翼と目され、他作品にみる禍々しい表現こそないが、乱歩のエロティシズム
がそれこそ蜃気楼のように見え隠れする傑作である。
「虫」と「盲獣」系統的に類したこれらの作品は乱歩のグロテスク嗜好の最右翼。
「虫」
一読者のわたしは、この完全犯罪を狙った殺人の動機と死体隠匿を乱歩がどう話を推し進めていくかに期待をもった。
しかし、乱歩はその期待を裏切り、眷恋する美しい女の死体処理と腐食過程の細部にわたる描写にうつつをぬかして
いるため、お決まりの
探偵や刑事の出番がない・・・好みは読者各位に拠るところだろう。
「盲獣」
これは極めつけの作品である。昭和6年の作とあるものの、こうした快楽殺人の手法と盲人の触感芸術をタイアップ
するところは、さすがに現代社会でも相いれない嗜虐性に満ちている。
美女の四肢を切断し弄んだあげく湯船のなかに放り投げ、血糊風呂にどっぷり浸かってニタつく盲人殺人鬼。
乱歩の筆はあながちウケを狙ったり、機知をもってしては描けない凄惨な場面をいとも快調に淡々と嫌味なく描写
する。
後年乱歩自身がこの作品を全集に入れたくなかったと述懐するほどのいわくつきのモノであることを本全集解題
より抜粋しておく。
1969年7月20日アポロ11号が月面に着陸し人類最初の一歩を踏み出した。1969年10月29日インターネット(ALPANET)の最初の通信が行われた。国際的には、1969年6月8日にニクソン大統領が
ベトナムからの米軍撤退計画を発表し、6月10日:南
ベトナム臨時革命政府が樹立された。世相を表す言葉は、大学紛争、内ゲバ、造反有理、ベ平連で、話題としてヒッピー族、フォークソング集会、粗大ゴミなどが思い出される。
そんな1969年に
新宿西口地下広場で
ベトナム戦争反対をフォークソングで訴えた若者たちが話題になった。彼らをを中心としたドキュメンタリー映画「地下広場 -1969・春~秋-」(1969年・大内田圭弥監督作品・モノクロ・84分)のDVDがこの本の魅力だ。
そして当時のフォーク集会の中心にいた大木晴子さんの回想と仲間たちの文章の引用など貴重な資料集でもある。この書籍は1969年という世界の変換点を
新宿西口地下広場から振り返るものであり当時を知らない若者たちに問題を提起するものでもある。
リリース当初日本では某レコード屋のみでの発売でほとんど話題にもならず、素通りされた感があるこのボックスセットですが、もしこれを買うことを検討していて迷っているのならば、今以上値段が上がらないうちに購入することを私はお奨めします。
まずは収録曲の音質がすごく向上しています。十数年前にアンドリュー・オールダムがインタビューで「マスターテープは室温がしっかり調整された部屋で保管している」と言っていたのは本当何だったのだなと思いました。1枚目のCDは唯一『Greatest Hits-Immediate Years』として単独でも発売されていますが、聞けば今まで発売された他のCDとの音質の差は歴然です。
そして、昨年発売された『Small Faces』と『Ogdens' Nut Gone Flake』のデラックスエディション(輸入盤)とこのボックスセットがあれば、今までに発売されたイミディエイト・レコード時代の音源は殆ど揃います。目ぼしいところで収録されていないのは、”Every Little Bit Hurts” のスタジオバージョンくらいでしょうか?その他にも ”Take May Time”(インスト。本当にSmall Facesの曲?)とか ”Tin Soldier” の半分だけボーカル入り、半分インストバージョン等が漏れていますが、それらは個人的にはどうでも良い範囲で、スタジオ
セッションの様子等それらが無くても余りある貴重な音源がここには収録されています。約3年という短い期間を考えると、もうここに収録されたもの以外に重要な録音は殆ど無いのではないかと思われます。それ程内容は充実しています。
収録曲の中には今までと曲名が変わっているものもあります。”The War Of The Worlds” は “Jack” に、”The Pig Trotters” は ” Fred” に、そして ”The Autumn Stone” は ” Jenny's Song” になっています。また、その ”The Autumn Stone” と “Wham Bam Thank You Mam”(のステレオミックス) については新たにミックスし直されたバージョンでの収録となっていますが、今までのミックスは解散後に勝手に作成された非公認のミックスで今回が初めて公認版という解釈です。特に ”The Autumn Stone” でのスティーブマリオットの生々しいボーカルを聴くとハットします。
“I'm Only Dreaming” や “The Universal” のステレオバージョンはCD4に収録されており、’take 1 stereo mix’ と記載されていますが、これらは今まで発売されていたステレオバージョンと同じミックスです。
収録曲全てのレコーディングデータ、歌詞がしっかり記載されたブックレットが付いている事も貴重です。
ということで非常に丁寧に編集されたボックスセットで可能であれば是非購入をお奨めします。
値段はリリース当初日本の某レコードショップで1万9千円(送料込)、アメリカアマゾンではもう少し安い値段で買えたかもしれませんが、私が今日現在で見たこのサイトの値段は既に他ではプレミアムが付いた値段になっている事を考えると、良心的な値段ではないかと思います。まぁ、本当はばら売りでも発売するなど、誰もが購入しやすい方法で発売して欲しかったと思いますが。。(なので星4つ)