普段あまり漫画を読むことはないのだが、ふとしたきっかけでろくに予備知識もなく手に取ったまま一気呵成に読み通した。それだけの力を持った作品である。
登場人物はイマドキ(といっても20年近く前の作品らしいが)の男女の高校生たちであるから、恋愛模様などを描く普通の青春群像モノ、と思わせる一見軽い
タッチの絵柄とは裏腹に、というよりまさにそれだからこそ、全篇を覆う虚無感と閉塞感とが際立つ。
この作品の中では、恋愛感情は、それが異性間か同性間かに関わらず、常に一方通行であり、決して報われることがない。リアルな生の実感を欠いた登場人物たちは、それぞれの感情の論理に従って動くだけで、心を通わせ合うことのないまま互いに傷つけあう。「あたしはまだ人を愛することを知らない」と述懐する主人公にしても、まさに愛せないことによって間接的に人を傷つけてしまうのだ。
そして、主人公らが、生きる実感の余韻のようなものをわずかに呼び起こすことができるのは、河原にうち捨てられた腐りゆく死体を見るときだけなのである。
リアルな生命感を欠いた明るい閉塞空間の中での愛の不毛。
思えば、この作品が連載された90年代の前半は、TVドラマ『高校教師』が大ヒットするなど、こうした主題が急速に浮かび上がってきた時代であった。95年のオウム真理教の事件も、我々一人ひとりに巣喰うこのような閉塞感からの脱出願望が尖鋭化して表れたものではなかったか。
同性愛、ドラッグ、いじめ、引きこもり、拒食症など、現在も問題となっている現象が先取り(?)されていることにおいてではなく、我々はまだこういう閉塞空間から抜け出すための足掛かりを全く見出せていないという意味において、今もって非常にアクチュアルな作品であると思う。
収録曲
(1)ぼくらの
パーマン(石川進)
(2)
もーれつア太郎(桂京子)
(3)「
忍風カムイ外伝」より〜忍のテーマ(水原弘)
(4)ジャイアント・ロボ(マイスター・ジンガー)
(5)
キックの鬼(沢村忠)
(6)なんたって18才(岡崎友紀)
(7)
ゲゲゲの鬼太郎(野沢雅子・大塚周雄)
(8)ウルトラセブンのうた(みすず児童合唱団&ジ・エコーズ)
(9)佐武と市(GEMシンガーズ)
(10)ケンちゃんトコちゃんGO!GO!GO!(宇野ゆう子・少年少女合唱団みずうみ)
(11)ゆけゆけ飛雄馬(アンサンブルボッカ&ジ・エコーズ)
(12)光速エスパーの歌(望月浩)
(13)アニマル・1(桂京子)
(14)男一匹ガキ大将(穴倉正信)
(15)ママはライバル(岡崎友紀)
(16)スーパー・ジェッター(みすず児童合唱団)
(17)河童の三平(ヤングフレッシュ・田の中勇)
(18)
キャプテン・ウルトラ(みすず児童合唱団&ジ・エコーズ)
(19)夕焼け番長(加藤みどり)
(20)男どアホウ!甲子園(フォー・スラッガーズ)
1990年東芝EMI、TOCT−5591