全体を通じて快適な作品。開放的で乾いた、しかし豊かな音色の好演奏が次々と聴ける。中でも1曲目の「祈り」がいい。メロディーを朗々と聴かせつつ、その合間に「タータタ、タラタタ、タラタタ、ターター」という特徴的なフレーズが何度も繰り出される。この執拗な繰返しがたまらない。最近ではこれの直前に「さん、はいっ」と合いの手を入れて歌いながら聴いている。出だしにふさわしい、実に気持ちのいいナンバーだ。
以降もいろんな調子のボサノバが続く。聴き流しても快適だが、思わず耳をそばだてる心地いいフレーズが現れるので、結局は聴き入ってしまうことが多い。「私達の悲しみ」の太い
フルートや「無用の景色」の刻むようなピアノソロなど、何気ない所にも快感のツボがある。