絵を描くのが大好きな少年、フィン・ベルは、スケッチに出かけた海で、脱獄者アーサー・ラスティグの逃亡の手助けをする。ある日、かつての大富豪のディンズムア夫人の邸宅を訪れたフィンは、夫人姪のエステラの遊び相手に指名される。やがて、青年になったフィンは、美しく成長したエステラに恋をするが、エステラは別れも告げぬままに突然ヨーロッパに旅立ってしまう。・・・
イギリスの文豪チャールズ・ディケンズの小説を、舞台を現代に移して映画化した作品です。緑色で統一された衣装や
美術の美しさには、うっとりしてしまいます。絵を描くことに情熱を傾け、一途に恋する純朴な青年フィンにイーサン・ホーク。フィンを翻弄する令嬢エステラに、グウィネス・パルトロウ(惚れ惚れするような美しさです!)。その他にも、謎の老婦人にアン・バンク
ロフト、凄みのある脱獄囚にロバート・デニーロと、キャスティングもぴったりです。ただ、ボロボロに荒れ果てた邸宅など、現実離れしたところもあるのですが、これはこれで幻想的な雰囲気を楽しめる作品だと思います。エステラやディンズムア夫人など、人物像が中途半端だという印象もありますが、「出会い」と「別れ」を繰り返してきたフィンの数奇な運命を通して、「大いなる遺産」という意味がわかったような気がします。
新潮版を読み始めはじたものの、読みにくくて冒頭で挫折すること3回。もはや開くことのなくなった「大いなる遺産」でしたが、新訳がでたということで購入し、今度は最後まで一気に読んでしまいました。
上巻の真ん中あたりが冗長な気もしましたが、読み終わった今は退屈なところをとばさず丁寧に読んだからこそ最後に大きな感動を得ることができたのかなとお思います。
ピップの欲望、葛藤や後悔といった心理描写は非常に優れていますし、登場するキャラクターもみんな個性豊かで面白いです。ラストの謎ときもスリルいっぱいで、ページをめくる手が止まらないほど楽しめました。
しかし他のディケンズ作品同様、恋愛感情については共感できない部分が多かったです。エステラの描写が薄っぺらく、ピップが一生想い続ける程の魅力が伝わってきませんでした。それ以外は文句なしの傑作と思います。