本作があってこその、島本版「スカルマン」である。
しかし、あっちはまた別物。
本家本元の「スカルマン」は、少年マガジン誌上に正月の特別読み切り作品として掲載されたものだ。
そして、このキャラクター・デザインが、のちの
仮面ライダーの基になった。
石森キャラは、主役が分かりやすい。
だから、彼がスカルマンだということは、登場した瞬間に分かる。
本作は、誰がスカルマンかという興味ではなく、スカルマンの行動原理、そしてキーになるのは最後に明かされる妹の存在である。
ただ、ストーリーの都合があると思うが、ガロの存在は少々安易である。
超自然、または超科学といっても良いか、そういう力を使わなかったら、ダーク・ヒーローとしてもっと存在感がアップしたのではないだろうか。
また、ページ数の都合があったと思うが、かなりストーリー展開が速すぎる。
もう少し、じっくりと書き込んだら、いろいろと面白い展開ができたんじゃないか、とも思う。
それに対して島本版は、ページ数が多い分、冗漫な展開になってしまったり、妙なエピソードが挿入されたりと、なんだかごちゃごちゃしている。
まあ、あれは石森版の後日譚という体裁なのだが。
ただし、石森版スカルマンが妙な能力を持っていないことは、良かったと思う。
普通の能力の人間が、
仮面で身を隠して行動するという、古のヒーローたち、「七色
仮面」、「月光
仮面」、「アラーの使者」、「白馬童子」等のような存在であって欲しい。
同時期に著者には「大侵略」という、やはりマガジン誌上に正月読み切り掲載された作品がある。
どちらも共通して、家族への愛、というのがテーマとなっている。
作品スケールは「大侵略」の方が大きいが、こちらはヒーローものではない。
石森のヒーロー道を継ぐのは島崎しかいない。
この、ほとばしる情熱的な描線。
ヒーローが走り、飛び、叫ぶ。
「スカルマン」は石森のダークヒーローであり、もともと「少年マガジン」誌上に読み切りで掲載されたものだ。
復讐にその暗い情熱を燃やすダークヒーローは、
仮面ライダーのプロトタイプと言われている。
そのキャラクターを使用して、独自のストーリーを展開したのが本作である。
スカルマンが次第にヒーロー然として行動するようになり、そして巨悪に対して、最後に真のヒーローが誕生する。
登場する各キャラの名前も、分かるひとには元ネタが分かる。
そして、ストーリーの進行にともなって、さまざまな石森キャラが登場してくる。
それが敵だったり、味方だったりするあたりも、また本作の読み所である。
もともと、石森
タッチの絵柄の島本は、石森ヒーローの魂を継ぐのに最適な人材だ。
その
タッチ、今にも汗が飛んできそうなほどの迫力。
これこそヒー
ローマンガだ。
ただし、主人公が超能力っぽいのを使用するのは、ちょっと残念だ。
スカルマンは、あくまでも生身のヒーローでいてほしかった。
かつてのヒーローは、「月光
仮面」、「アラーの使者」、「七色
仮面」などなど、生身の存在だった。
それが、
仮面を被っただけで、超人的な活躍をした。
それでも生身の弱さを持つ、というのがスリルでありサスペンスだった。
特殊な能力なんていうのも、持ってはいなかった。
変身能力や特殊能力は、ガロや、ラストで登場する“アレ”にまかせておけば良い。
それと、著者の趣味かもしれないが、あまりにも女が登場しすぎる。
これがみんな、スカルマンに味方しすぎる。
このあたり、石森ならもっと違った形にしただろう。
本作は良く石森ヒー
ローマンガを受け継いでいるのだが、その点だけは残念だ。
