立川談志、吉川潮「人生、成り行き-談志一代記」を読了。立川談志の生涯を吉川潮が聞き取り、表した書です。立川談志が亡くなり、彼に注目が集まっています。彼の「落語は人間の業の肯定である」という哲学がうっすらとわかる書であります。彼の考え方や落語論の一端が垣間見れます。談志を知る入門書でしょう。談志に興味がなくても楽しめる作品です。一人の落語家の伝記と思って読み進めることが出来ます。
談志は大げさに言えば、落語の神様が作り出した奇跡なのかもしれません。ここまで芸に純粋な人を知りません。そして粋を大切にする人です。この感覚って現代人に理解されるのかどうかわかりませんが、男なら心に留めておきたい事柄だと思います。そのよなことを考えさせてくれる優れた書です。
立川談志を理解するには彼の普段からの言動、物の考え方を常日頃から見ている必要がある。熱心な談志のファンは談志教という宗教の信者になって行く。彼の世界観、宇宙観、物の捉え方、芸術論、そうしたものが、談志の落語なのであり、落語は人間の業の肯定であり、落語は
イリュージョンであり、なのである。TVでの不謹慎な発言も立派な芸として成り立っており、芸人ふぜいの言う事に目くじら立てるな、なのである。彼の凄みは非常識を見事に演じ切ったその生き様にあると言えるであろう。
いろんな小説なり映画なりをそれなりの量楽しんでからやっとこ「人間の業の肯定」との言葉の意味がぼんやりと、まことにぼんやりとではありますが理解できるようになって初めてこの名著を読みました。
落語そのものを論じつつも、これはもしかすると道徳論の本ではないか?との思いを持つにいたるという感じです。すっとんきょうな感想になってしまっていたら恥ずかしいかぎりですが、道徳・倫理という意味で繰り返し読んでいる、読むべきであるというのが正直な心持ちです。
もちろん、落語という芸そのものへの興味も広がっています。同時期に桂枝雀さんの評伝を読んでいたこともプラスになったのでしょう、汗をかきつつ自分をさらすまっとうな職業人!!に敬意を。