先日、ほぼ同じ顔ぶれでラナ・レーンの10周年来日公演のDVDが出ているが、本作はその前年にエリクとラナのコンビ名義で行われた欧州ツアーからの厳選されたライヴ映像集になっている。
楽曲はロケット・サイエンティスツ、あるいはエリクのソロ名義の曲が中心だが、オランダ人のペール・ヴァーシューレン(G)とエルンスト・ヴァン・イー(Ds)という凄腕が弾き出す素晴らしい演奏でオリジナル盤を凌ぐ説得力を持って繰り広げられる。
ボーカルも、ラナとケリー・キーリングが音域の広さと感情表現の巧みさで素晴らしいの一言。特に、ケリーはなんとベーシストも兼ね、フレットレス・ベースを巧みに操り難易度の高いプレイも難なくこなしているのに驚いてしまった。歌い手としてだけではなくベーシストとしても一流だったんだ、この人...。
もちろん、御大エリクのプレイはパッセージの難易度、速度ではなく、むしろアナログ系のキーボードの音色を実にセンスよく織り交ぜるアレンジングと的確な指裁きで、楽曲に華やかさと起伏をうまく作っている。ソロアルバムにキース・エマーソンが賛辞を送っていたが、幅広い音楽性と、楽器への造詣の深さはキースをしても褒めるしかなかったのだろう。
欧州のファンともども、彼らを見出し評価している日本のファンは胸を張って良い、そんな感動がじわっと感じられる良質の作品だ。プログレファンはじっくり楽しめると思う。
時期、会場、メンバー、画質、音質どれをとっても一貫性のないもの。しかし各メンバーのインタビュやおまけも付いていて楽しい。このようなつくりはDVDならではだと思うが賛否はあるだろう。
ハードロック寄りの楽曲の多い中、やはり「Under the Olive Tree」は超名曲だと思うしRocket Scientistsのライブより編集された「Avalon」のカッコ良さはこのDVD中でもベストと感じる。
エリクはこのDVDの編集に苦労したらしく、ギターリストの演奏自体と映像を差し替え、画面からアルイエン・アンソニー・ルカッセンを切り離すために不自然なカットが多くなっていたりとその苦心が伺える。それが醜く非常に残念だ。
できれば「Symphony of Angels」もRocket Scientistsのツアーからのカットにして欲しかった。原曲同様ちょっと激しすぎるのではないでしょうか。
選曲はもう少し何とかならなかったのだろうか。
スタジオ作に比べると音が薄い印象だが、演奏は悪くない。HMというよりもシンフォ系と思って聞けば、華麗なインストをはさんだセットリストも面白みがあっていい。この手のバンドのライブステージとしてはやや地味な感じながら、ここ半年ほど何度も見ているけれど飽きが来ない。
個人的にはLanaのボーカルを美声でバックアップするMark McCriteの目立たない活躍が◎。やたらに自己主張するPeer Verschurenのもろヘビメタ・ギターに比べて、なぜかErikのキーボードは引っ込んだ印象。もっとキーボードサウンドを押し出したミキシングにしてもよかったのでは。それと、ドラムスが映るシーンだけ音と映像がわずかにずれているように感じられたのが残念。
完成度の点ではイマイチながら、おおらかに見ればいい雰囲気なので、おまけして★4つ。
大傑作ではないけど、繰り返し見ても飽きないというのは、なかなか
よいことです。