人間の條件 DVD-BOX
かつての日本人は貧しかったけど、精神的には高い自尊心と矜持を有していた。
今の日本が失ったものはこうした「人間としての自尊心、矜持」ではなかろうか?
我々はもう一度、我々の足元をしっかり見詰め直さねばならないのではないだろうか?
もう一度、そんな時代が日本に来る事が有るのだろうか?

もう何年も前、新宿の映画館で「人間の条件」全6部の徹夜上映を何回も見た。
TVドラマでの加藤剛さんも良いけど、「人間の条件」は矢張り、仲代達也。
戦争という極限状況の中で、自己の生命と良心を守る為に苦闘した一人の男。

朝日を背中に浴びながら、少し精神を高揚させて歩いていった事を、今でも思い出す。
今まで、何とか背骨を曲げずに生きて来た?のも「人間の条件」の影響は大きい、と思います。

 

戦争と人間 第一部 運命の序曲 [DVD]
内容的に一定の階級史観・帝国主義史観の影響を受けていたことは否定できないかも知れないが、山本薩夫監督・山田信夫脚本(第二部より武田敦との共同脚本)になる本三部作は、ロシア的な長編小説のそれを想起させるその雄大なスケールと骨太なヒューマニズムで観る者をひたすら圧倒する。重要なのは、徒な先入観を排し、まずは名優たちの溢れる熱情と抑制された名演技の織りなすタペストリーに見入りそして感じることではなかろうか。

1970年(昭和45年)公開の本作だが、第二部そして第三部と併せ、評者の青少年時代には毎年のようにテレビのゴールデン・アワーや深夜帯に放映されていたものである。(時折瞬時に出てくるヌード・シーンに目を凝らした記憶も懐かしい。)DVD化はされているものの、それは逆に観客が一部のみに限定されてしまうということでもある。日本人の共通教養からこのように重厚な映画作品が消えてしまっていいものか、危惧とともに疑問を覚える。繰り言ではあるが、このような作品を観て育った経験の有無は、ある意味何事にも変え得ないのではなかろうか。

 

戦争と人間 DVD-BOX (初回限定生産)
テレビ放映で一度観たことがある。十代だったので内容が殆ど解らなかったが、漠然と、凄い映画だなぁ、と感じた。当時、戦闘場面・高橋英樹&浅丘ルリ子の愛・音楽にのめり込んだものだ。きっと、かなりカットされていたのだろう。今回のDVD-BOXのお陰で、以上に完璧に甦る!

そうか、思い出した!左翼の役が多かったイケメン。最近トレンディドラマによく出てくる、あのぶよぶよ小父さん。二人は山本圭だったのだ。時は残酷なり…

三國連太郎と佐藤浩市はやっぱり親子だ。顔は似てないが、体つきはそっくりだ。

十代の頃も今も、左翼の描き方について「偽善的」に思える。確かに日本軍は大陸を侵略していったが、何の考えもなしに外の物を盗っていったのだろうか?私たちの祖父は皆、莫迦だったのか?何のために死んでいったのか?

最後に、監督が山本學・圭兄弟の叔父とは知らなかった。

 

人間の條件〈上〉 (岩波現代文庫)
 人間の条件の主人公、梶は、いわゆる特高(特別高等警察)に逮捕された経験を持つ知識階級の出身者であり、そのような知識人がどこまで理性に忠実に生きていけるかと言う主題が貫かれている。
 現在は軍需産業に奉職する一会社員であり、忠実に職務をこなしている。その正確さは彼の能力の高さである。机上では理想主義を貫くことができるとしても、現実の世界の中では難しいことが、巧く描写されている。それは、満州の鉱山への転勤を命じられ、そこで中国人の捕虜を労務者として受け容れるところから始まる。
 他の日本人社員と格闘しつつも中国人捕虜を人間として扱おうと努めた。しかし所詮、捕虜にとっては敵である。王という大学の助教授であった中国人と交流を深めつつある一方で、裏切りや恩を仇で返す行為を受けたりしても自分の良心に忠実でいようとした梶は、脱走者の処刑の際、勇気のある決断を迫られる。
 処刑対象者の内、二人が処刑され、三人目のときに一歩前に出て、処刑に静かに抗議する。彼も殺されそうな状況になるが中国人の捕虜たちが王の指揮下、それを妨害する動きを起し、殺されずに済む。しかしその後待っていたのは、拷問と徴兵免除の取り消しであった。
 私は登場人物の中では梶を支持しつつも、現実主義者的な沖島に共感を覚えたが、主人公が今後、どのような行動をとるのか楽しみにしている。

 

人間の条件〈中〉 (岩波現代文庫)
梶は中国人捕虜の死刑に抗議して徴兵免除の権利を失い、入営する。待ち受けていたのは旧軍にはびこっていた私的制裁の嵐と不条理の世界であった。しかし彼は訓練や私刑にも良く耐え、彼の持っていた天分と頑健な肉体が彼を模範的な兵士へと成長させる。そして彼は昇進を遂げ、新兵の教育を任される。しかし彼は古年兵のように振舞わず、生き残る知恵を新兵たちに教える。その中で、新兵たちの信頼を勝ち取っていく。
そして最後に私刑を繰り返してきた古参兵たちに叛旗を翻す。あまりに理不尽な行いをしてきた古参兵は梶の率いる新兵たちの銃口を突きつけられ、手出しができない状況へと追い込まれる。この場面は圧巻である。戦うための組織が内部で私刑等が恒常的に行われいたことへの梶の復讐は軍隊において合法的に行われたのは驚きである。最後の行動は軍法会議ものだが、実力が悪習に打克つ瞬間でもあった。でもこのようなことは例外に違いない。
軍隊内の生活の描写が巧みになされているのには非常に感心した。

 

人間の条件〈下〉 (岩波現代文庫)
 国境守備隊はソ連軍の圧倒的な軍事力の前に崩壊・全滅した。その中には主人公梶の学生時代・会社時代の友人も含まれていた。梶は生きて妻・美千子に会うために必死の退却を行う。
 彼を慕う部下や途中で合流した敗残兵とともに小戦闘を繰り返しながら家路を目指す。生きるために民間の非戦闘員が巻き込まれることにも目をつぶらなくてはならなかった。しかし必死の逃避行も民間人を連れて逃げていたが故に投降し、捕虜となり収容される。収容所での過酷な生活を知恵を振り絞りながら生き抜くが、かつて梶の目の前で非人道的な行いをした兵士が、今度は収容所内で部下を殺し、梶は復讐のために彼を素手で殴り殺し、収容所から脱走する。一路家路を目指すが、敵国日本人のしたことを忘れない中国人に半殺しにされたり、飢えながらも美千子に会いたい一念で逃避行を行う姿は人間の情念の凄まじさを感じる。
 極限下で生きると言うことの厳しさと人間性を考えさせられる一冊である。

 

戦争と人間 第三部 順子の慰問と耕平の出征



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