映画「
ソーシャル・ネットワーク」(好き嫌いはあると思うが傑作)を観て本書を読んだ。映画版はザッカーバーグ本人に取材を拒否され、「服装以外は嘘」とまで言われてしまったが、本書は本人から執筆を促されて全面協力の元に書かれたものである。
映画版はフェイスブック創成期の若者たちの熱狂と葛藤が描かれ、特に当初のCFOで出資者であるサベリンとザッカーバーグ、歌手のジャスティン・ティンバーレイクが好演した初代社長のショーン・パーカー(ナップスター創立者)、3人の愛憎を一つの柱にしているが、これはフィクションであることは割り引いて考えた方が良いだろう。
本書を読むと、サベリンの役割は最初のうちだけであり、ハーヴァード大学の寮の一室からうまれた一種のサークルが会社として成長するためには、多種多様な人材が必要だったことが良く分かる。特に、創立メンバーでプログラムには素人だったモスコヴィッツや、広報担当として活躍したクリス・ヒューズ(後に退職しオバマ選挙戦の
スタッフになる)などは、映画ではあまりクローズアップされていないが重要なメンバーである。更に、カリフォルニア州パロアルトに移ってからは、自分の創立した会社2つから追い出されたショーン・パーカーが「投資家には気をつけろ」とアドバイスしたり、資金導入に重要な役割を果たすマット・コーラーが入ったことで会社として成長する起爆剤となる。
先行企業のグーグルと比較されるところもあるフェイスブックであるが、本書にもある通りグーグルが「情報」だとしたらフェイスブックはあくまで「人とのつながり」。ビジネス面で言えば、グーグルもユーザーの検索傾向から広告を表示してくるが、フェイスブックは更に細かく個別にターゲティング出来る(当初は大学関係者に限られていたので、その大学の周辺の店の広告などを出した)。(本書ではザッカーバーグがラリー・ペイジに「なぜフェイスブックを使わないの?」と質問する場面があって愉快だ)更にフェイスブックはプラットフォーム化を目指すことで、グーグルをも脅かす巨大な存在になろうとする。
そしてザッカーバーグは何より世界を透明なネットワークにすることを理想とする。映画では当初女性に振られた腹いせに始めた、コミュニケーション不全の変わり者として描かれているが、本書では巨額の買収を提示されても「カネはいらないんだ」と拒否する一種の求道者のような存在。そして海千山千の投資家も「彼は生まれながらのCEOだ」と驚嘆するような遠大なビジョンを持ったカリスマである。
しかしなぜアメリカでは学生の
起業が成功するのであろうか。一つには理系もビジネス視点を持っていること、大きいのはスタートアップに投資し、後押しする大人が必ず存在すること(フェイスブックではワシントン・ポストのオーナー一族のドン・グレアムやペイパル創立者のピーター・シールなど)、があげられるだろう。会社が巨大化するとフェイスブックの創立メンバーが皆退社し、役員が「大人」ばかりになる、という事実も語られているが。では、日本ではホリエモンがそうか、というと違う気がする。むしろ紙媒体ではあるがリクルート創立者の江副氏の方がそうかとも思うが、世界を席巻するモデルではない。
地域によっては類似SNSに負けてはいるが、ザッカーバーグ=フェイスブックの理想である透明性のある礼儀正しいコミュニケーションは一種の教義のような理想を持ち、人々はそこに魅かれるのだろう。
本書はアメリカのジャーナリズムの良き伝統である徹底した
調査に基づいた良書であり、また現代の英雄譚の一種である面白いストーリーである。
Facebookの創業者、マーク・ザッカーバーグの思考法と同社の取り組み、
社風などに注目した内容で、
起業家がどんなマインドでビジネスに臨めばいいか、
どんなチーム作りをするべきかを解いた一冊です。
フェイスブックについてしか書かれていないと思っていたのですが
事例として、アップル、amazon、トムス、ザッポス、アップルなどが書かれていたのは
思わぬ収穫でした。
それぞれの経営者の思想や発言、採用方針、マネジメントが学べました。
最近日本では、以前と比べるとフェイスブックブーム、マーク・ザッカーバーグブームが
下火になってきたと思いますが、この本を読むと改めて彼のすごさを感じることができました。
以下に、私がこの本を読んで参考になった部分を引用して紹介します。
「必ず自分よりも賢い人材を採るんです。
社内を見回せばわかりますが、みんな私より上手に仕事をこなしています。
最初はプライドが傷つくかもしれませんが、長い目で見れば、いい結果につながります」
傑出した人材を採用する最大のメリットは、管理が不要になることだ。
明確な社風を持つ企業は、人材の採用だけでなく、人を切ることにも長けている。
会社が大きくなるほど、ザッカーバーグはサイトの使い勝手や長期戦略へのこだわりを深めていった。
そのうち彼は小さな革表紙の日記帳を持ち歩くようになる(本人は「改革の書」と呼んでいた)。
タイトル部分に自分で彫っていたのは、
「世の中を変えたければ、まず自分が変わることだ」という
ガンジーの言葉だ。
この日記には、サイトの新しい機能に関する自分なりのアイデアやサイト
を開発者向けのプラットフォームに育てるというアイデアなどがびっしり書き込まれていた。
◆パートナーシップに必要な7つの条件
1.期待の明確化
2.価値観とビジョンの共有
3.信頼関係
4.公平な価値交換
5.力の補完関係
6.使命感
7.互いに尊重し合う姿勢