漁港グロースターのカジキマグロ漁船に乗り組む漁師たちの物語だ。長い間不漁が続いていたのに、天候と豊漁に恵まれる。喜びながら、船倉に獲物を積み上げていく。そのうち、船倉の天井にまで届くほどになる。その重量30トンというから小さな漁船としては大漁だ。
しかし、そこに未曾有の嵐が近づいてくる。さらに折悪しく、製氷機が故障する。すぐに戻らねば折角の獲物が腐ってしまう状況だ。嵐を突破して港に戻る選択肢と獲物を捨てて嵐から離れる選択肢に直面する男たち。船長と船員たちが話し合う。一瞬のためらいの後、「俺たち、グロースターの漁師だぜ。」との言葉に全員の意思が一致する。嵐をついて帰港する方を選ぶのだ。
結果からいえば、これは裏目に出る。
ジャケットの表紙になっている大波を乗り越えられずに遭難するのだ。製氷機が故障しなければ、獲物を捨てて嵐から離れていれば、と繰り言は尽きないだろう。遺族が漁業会社の社長に食って掛かる場面もある。だが、社長は、日本と違って軽々しい謝罪はしない。「仕事だ。」という。
そうだろうなと思う。こういう場面に直面するとき、前進か撤退かを決めるとき、やはり逃げることは容易ではない。結果から見て、それも勇気なのだろうか。獲物を捨てて、無事に帰ってきたときに、家族たちに会わせる顔があるだろうか。
それにしても、Petersen監督は海を描くと素晴らしい。久しぶりに「Uボート」も見たくなった。