何気なく買った一冊だった。未来版のロビンソンクルーソー物語。実に夢のある物語で、逸る気持ちで読んだ覚えがある。
大人になって、デッキで
日光浴をしながら、凍らせたズブロフツカを飲み揺り椅子で読むのに適当な一冊を手にする時、本書と決まっている。何度読み返したかはわからないが、単純明快なストーリーとあっという間に読める内容。そして、夢のあった時代の書籍。
そう、夢見るロボットの物語は、夢見る世代に一度読んでおくべきだと痛感する一冊である。
幕末から維新という激動の時代を舞台に、波瀾と創造性に満ちた壮大で魅力的なストーリーが展開されます。
SFというほど破天荒なものではありません。モンテクリスト伯や
宝島のような物語のなかに、里見八
犬伝や真田十勇士といった忍術・妖術ものの要素が組み込まれているという意味ではSFなのでしょう。
著者(故人)が海外SFの翻訳をしてきた過程で身に着けた小説を書く上での魅力的な要素をふんだんに盛り込んで、SFではなく歴史ものとして結実させた結果、これほどの作品が完成したのだと思います。
自分の場合、初めて読んだときの年齢が若かったこともありますが、読み進んでいくにつれて、歴史の陰に本当にこういったことがあったのではないかと錯覚しそうになるほど、物語世界にのめり込んでいけます。とにかく純粋に面白い小説です。時代考証もしっかりしており、快作と言っていいでしょう。
かつて故・星新一氏も「日本人によって書かれた冒険小説のベスト・ファイブに入れていい傑作」と述べていますが、幅広い年齢層に渡って一読の価値がある小説だと思います。