オリジナルは2009年リリース。邦訳は2010年2月25日リリース。自身193センチ104キロという体躯を持つクリストファー・マクドゥーガルが、『どうして私の足は痛むのか』という疑問からスタートし、毎年全ランナーの65%から80%が故障する、という事実から本当の『ラン』を探す『物語』である。
痛ましい真実その1 最高のシューズは最悪である
痛ましい真実その2 足はこき使われるのが好き
最後の痛ましい真実 人間は靴なしで走るようにできている
著者はこの答えを求めて、
メキシコの秘境タラウマラ族の元へ向かうのだが、その書き方が実に物語的なのがすばらしい。実際この本は3つの物語が組み合わされて出来ている。
1.著者が
メキシコの銅峡谷でカバーヨ・ブランコと呼ばれる
幽霊を見つけ、史上最強の『走る民族』タラウマラ族の秘術を探る
2.多くのランニングシューズの人間の足に及ぼす悪影響。そして『人間は長く走るために進化した』ことを科学的に解き明かす
3.タラウマラ族と世界最速のウルトラ・ランナー、スコット・ジュレク他6名の
メキシコ荒野での激突するレース
この3つの物語が文学的に融合しつつ語られるのが本作だ。
実に魅力的で読んでいると、ランナーになる気がない人までランナーに変えてしまう困った一冊である。そして、今も3月の第一日曜日にCopper Canyon Ultra Marathonは開催されているのだ。そしてカバーヨ・ブランコのサイトも存在し、たくさんの刺激を世界中の『ラン』する人に発信中である。そちらもチェックして欲しい。
福田健二を知ったのはTBSの情熱大陸の特集だった。サッカー
スペイン2部ラス・パルマスに助っ人として入ったものの、ケガのせいで活躍できず苦闘していた。番組は、福田が復活することなく、止む無く次のチームに移籍する場面で終わった。正直、痛々しい内容だった。苦しみ続け、でも何とか這い上がろうと闘う姿に、テレビの前で身動きできなくなってしまったのを覚えている。
事を成すには闘いを避けられない。闘いとは敵や味方のライバルとの争いだ。勝てば前進するが、負ければ惨めな立場に突き落とされる。だから、何かを成そうとする者は、ギリギリのところに追い込んだ人生を送らなくてはならない。そこに立ち向かうことが強く生きるということなのだろう。
本書をすべての闘う人に読んでもらいたい。