小野リサの素晴らしいところは、何を歌わせても「小野リサ」に染まるところで、その心地よさがファンにはたまりません。
個人的に一番好きなのは、冒頭の「黄昏のビギン」でした。オリジナルの水原弘とは違い、ちあきなおみの歌唱の雰囲気に近いのですが、今回収録してもらうことで、若い人にもこの曲の良さを感じ取ってもらえたのでは思います。歌謡曲テイストの中に、粋なバタ臭さが、ボサ・ノヴァに昇華したかのようでした。
ウェットな日本語で歌われた曲と明るく軽快なボサ・ノヴァの音楽とは、ある意味対極にあると思っていましたが、「翼の折れた天使」が見事なボサ・ノヴァに変身したのを聴くと先入観が正しくなかったことを知りました。
コードも原曲とは違いセブンスを多用し、リズム・セクションを強調したことで、小野リサの声がふっと浮かび上がるようでした。中村あゆみのロック色とは全く違う
ブラジルの青い空が広がるような小野リサの歌唱は優れ物でした。
「切手のないおくりもの」もイメージが変わって心地よく響きました。財津和夫の作詞・作曲だったのですね。何か愛らしさと爽やかさが増したように聴こえるのは、小野リサの魅力によるものでしょう。
「あの日にかえりたい」「いっそセレナーデ」はオリジナル・テイストに少し小野リサの歌が加わるだけでステキなボサ・ノヴァになるのを知りました。上質の音楽ですし、多くの音楽ファンに支持される歌唱でしょう。
「オリビアを聴きながら」「遠くへ行きたい」は別に小野リサでなくても良いでしょうし、必ずしも選曲と歌唱が上手くマッチしているとは言い難かったです。
「異邦人」も前奏にはひかれましたが、楽曲のコードを代えただけで上手く変身したとは思えませんでした。
半世紀前にヒットした西田佐知子の「コーヒー・ルンバ」が
ブラジル色をまとってお里帰りしたかのように聴こえました。CDに桜をマークしたのも日本を象徴してのことでしょう。
よく見ると、花びらが欠けていたり、花粉の部分のノリが甘くハゲてしまっているものが多数あります。花の1つ1つの品質を求める作品(ヘアピンなど)を作ろうと思っている方には、あまりお勧めできません。大量に飾りとして使うのにはOKだと思います。