脇役陣がすごい。特に、喜多川歌麻呂役の
佐野史郎は、ちょっとやりすぎ位の存在感。
写楽の天才ぶりに嫉妬する姿は、
モーツァルトに対するサリエリを思わせる。
十遍舎一九役の片岡鶴太郎の軽薄さやおかん役の岩下志麻の強さ・弱さもいい。
歌舞伎の魅力や江戸の情景の映像化なども魅力的で、満足できました。
18世紀の
ロンドンを舞台にしたミステリ。
これは、非常に面白い。
特に、18世紀の雰囲気が満載だ。
登場人物たちの言い回しがさすがに18世紀らしくないところは、まあご愛敬かな。
ミステリとしてのレベルは高い。
ストーリーも良い。
ただし、名前がカタカナなので、少々読むスピードが落ちるのが難点だろう。
本作は、できれば一気に読み終えたいミステリだ。
そして、解剖学黎明期の、医療と化学捜査におけるジレンマなど、本書の読みどころは多い。
登場する若者たちは生き生きとしているし、未来に対する希望や展望を持っている。
題材はけっこうグロいもいのがあるのだが、それを上質に
仕上げるという、まさに皆川ワールドである。
表紙がエグいが、中身はそんなことはない。
京極作品なんかより、ずっとすっきりしている。
脇役陣がすごい。特に、喜多川歌麻呂役の
佐野史郎は、ちょっとやりすぎ位の存在感。
写楽の天才ぶりに嫉妬する姿は、
モーツァルトに対するサリエリを思わせる。
十遍舎一九役の片岡鶴太郎の軽薄さやおかん役の岩下志麻の強さ・弱さもいい。
歌舞伎の魅力や江戸の情景の映像化なども魅力的で、満足できました。
歌舞伎を中心とした"舞台"(及び舞台装置)を舞台として、"死者との対話"という「能」のエッセンスをテーマとして強く打ち出した幻想的短篇集。表題作の他、「褥鬼」、「
紅地獄」、「桔梗合戦」、「化粧坂」、「化鳥」、「翡翠忌」の全7つの作品から構成される。
時制は現代で、主人公は浮世の情念に苦しむ、あるいは倦んでいるのだが、上述した"死者との対話"によって、それらの懊悩が倍化されて浮き上がる点が本作の見せ所。題材からして、日本的情念を扱っているのだが、「桔梗合戦」などはバリのバロンダンスをも想起させ、普遍的な人間の情念を扱う作者の手腕を味わえる。
個人的には、この「桔梗合戦」と、全体構成の巧みさで倒錯感を覚えた「化鳥」が特に印象に残った。表看板は歌舞伎、裏のテーマは能という如何にも作者らしい巧緻な技巧が光る短篇集だと思った。