クリント・イーストウッドが監督業に乗り出して、まだ間もない頃の作品。主演はもちろんクリント・イーストウッド。原作は、「シブミ」などの名作・傑作を次々と世に送り出した覆面作家トレヴェニアン。しかし、本作は原作の出来も良くなかったのだろうか、イーストウッド監督にしては珍しい凡作に仕上がってしまっている。
まず、イーストウッドが大学教授に全く見えないのが問題(しかも
美術を教えているってんだから)。この点で、もう「表向きは大学教授、裏ではスパイ」という部分が成立しなくなってしまう。それに、「ブラッドワーク」の頃のイーストウッドなら「スパイからは足を洗った」と言っても納得できるが、この頃のイーストウッドが言っても全く説得力がない。逆にバリバリ現役のスパイにしか見えない。ストーリーにも無理矢理感を感じた。スパイと山岳アクションという二つの要素を上手く絡め合わせようとしたのだろうが、残念ながら失敗に終わっている。バラバラの生地を、強引にパッチワークにしたかのような印象を受けた(実際、スパイ映画の要素はかなり薄い)。山岳シーンの迫力は凄いが、普通のアクションシーンは、やはり一昔前の作品だけあってショボい。それにイーストウッド監督お得意の淡々とした演出により、退屈感が割り増ししてしまう。やはりイーストウッド監督は西部劇とサスペンスの人なのだろう。
ただ、ジョン・ウィリアムズの手掛けた音楽は、スティーヴン・
スピルバーグ監督のお抱えになってからは聴けない哀愁漂うものになっている。それと、イーストウッドがスタント・ダブルも使わずに挑んだ山岳アクション。手放しで誉められる点は、本作にはこれくらいしかない。クリント・イーストウッド(俳優としても映画監督としても)のファンであるという方以外には、ちょっとオススメ出来ない作品である。
Excellent film, and very good seller.
確かほとんど時を同じくして出された「ジョーズ」がその年のアカデミーオリジナル音楽賞をとったジョン・ウイリアムス。
スピルバーグとのコンビを決定した彼が、これまた映画大好き野郎のクリント・イーストウッドに招かれ作ったのがこちらのアルバム。
ジャズ好きの2人で話も乗った事でしょう。「アイガー・サンクション」のテーマがクール・
ジャズやボサノバまたはホーン・アレンジでとウイリアムスのアレンジャーとしての力量も軽くご披露。「氷河登攀」ではアランフェスかアルビノーニのアダージョかと聞き違うほど作曲を楽しんでおられる。軽いたっちの「ジョージとの訓練」や同曲のアレンジ「ジョージがペース・メイカーとなる」はイーストウッドのお気に入りジョージ・ケネディ(日本でも人気で「人間の証明」「復活の日」などに出てる)の役(芸名のままジョージ)のテーマ。仲間が集まるといいものが出来るね。
1975年C・イーストウッド45歳の作品ながら、役柄は35歳前後の設定。違和感全くなし。題名からアイガー北壁に貼りついたシーンが主だと思いきや時間的には4分の1程度。4分の3は彼の背景やそこまでの経緯とクライマーとしてのト
レーニングシーン。美女たちとの絡みもあり、飽きることなく楽しく観させて頂きました。むしろ北壁に貼りついてからのテンポは早すぎた気がするが、結果的には過不足なく、これでよかったのだろう。全てC・イーストウッドがスタントなしで演じられた事実は観る者へのありがたいサービスでした。
明らかに007ボンド映画を意識した始まり方だった。
美術の教授として女学生との会話、これはそっくりそのまま「ライフ・オブ・デビッドゲイル」に使われている。まさに「そっくりそのまま」。