トリックや作風はとても理論型な作品と感じました。
タイトルの「F」のキーワードの意味も、総合的な結末も「なるほどッ!」とうなづける作品で、
読後もスッキリする、理の筋道にしっかりと乗っている作品だと思います。
ただ、各登場人物の感情や行動が、
「なぜその行動に至ったのか?」「なにがそこまでさせたのか?」といった部分が薄く、
感情移入ができないからか、「グイグイと引き込まれていく感」が持てず、
読中に「先が気になるから読みたいけど、う〜ん…まだ○○ページもあるのか…」と、
ついつい何度か思ってしまいました。
理系、というよりもミステリー性やトリックの解明の醍醐味を味わいたい方にはとてもお薦めだと思います。
ただ、ミステリーの中にも、作中の人物に感情移入して引き込まれたい(惹きこまれたい)といったことを求められる方には、
少々読むのがキツイかもしれません。
本書に関するレビューは多々あり、私も星4位には楽しめたという感想を抱いたのですが。まさか、読み終えた後で評価が変わるとは自分でも想像できませんでした。本書を読んだ上で、是非、同著者作の四季を読んでみてください。各作品間の世界観はもちろんのこと、本書においてさほど重要な意味に思えなかった文が四季では見事な伏線になっています。著者の構成力の素晴らしさに圧巻させられます。ですので、星5に修正です。