グレン・グールド、1932年生まれ1982年没ですから、もう死後30年経過したんですね!月日の経つのは早いものです。私がグールドを聴き始めたのは、1975年前後です、今も折に触れてCDを取り出し聴いています。なお、このDVD収録の映画は、昨年公開されたそうですが、残念な事に見逃してしまいました。従って今回が初見です。
グールドは、3歳から母親の手ほどきでピアノを習い、トロントの音楽院でオルガンとピアノを学び、1946年にピアニストとしてデヴューしました。1956年
ニューヨーク公演を見たCBSのディレクター、オッペンハイマーは、グールドの才能にほれ込み終身録音契約を結びます。そして、CBSからあのゴールドベルクが世に出るわけです。世界の名だたるピアニストが敬遠していたバッハでデヴューし、殆どペダルを使用しない、ノンレガートで各々の音が明瞭な響きを持つ、斬新な解釈を持つ音楽でした。また、その容姿がまるでロックスターのようで、奇行もあって、一躍時代の寵児になりました。そして、1962年4月6日のバーンスタインCO.nyo.pho.との公演ですが、公演に先立ってバーンスタインが、・・・ソリストと指揮者のどちらに主導権があるのか・・・のコメントをします。有名な事件です・・確か小澤さんもこの事を書かれていたように想います・・。そして、1964年、シカゴでのリサイタルを最後にコンサート活動から足を洗います。以後は、レコード録音、ラジオ、TVでの活動がメインとなります。そして、1981年、ゴールドベルクの再録、1982年脳卒中で死亡します。
興味を引いたのは、ソ連公演のエピソード、最初会場は閑散としていたが、グールドのバッハを聴いた聴衆が電話で素晴らしい演奏だと告げ、それで以後の会場は満員になった事。身分転換を図るためシェークスピアの朗読をした事(お気に入りはリチャード三世)。
そして映画の副題にもなっている愛。グールドは、人付き合いは苦手でしたが、女性関係は、普通だったそうです。コーネリアス・フォス、彼女は、絵描きで人妻でしたが、グールドと深い中になり(夫は離婚を承諾してくれなかったそうです)、4年間親密に暮らしましたが、グールドのパラノイアが酷くなり、泣く泣く分かれたそうです。そして、ロスラック(ソプラノ歌手)、ぺチュラ・クラーク(恋のダウンタウン、等で有名)とのロマンスも述べられていますが、どの程度かは不明。
当然、低い椅子(どこでもこの椅子を持っていった)で、
猫背で鍵盤に覆いかぶさるようにする、プレイスタイルも出てきます。また、彼の鼻歌、これは熱中すると自然と出てくるらしいです(他のピアニスト、例えばパハマンでも呟き、鼻歌が聴けます)。ただし、グールドの奇行、エピソード等については宣伝の意味合いもあるので、誇張されている部分も有るようです。
グールドのの生涯が簡潔に描かれていて、非常に興味深く拝見させていただきましたが、彼のレパートリー(非常に狭い)の好み、ザルツブルクをはじめ欧州での公演、
カラヤン、ストコフスキーとの公演、文学の好み〈愛読書)等についても紹介して欲しかったですが・・それらは、特典映像に入れることも出来たと想うのですが・・・
グールドはレコードの他に放送という媒体にも積極的だったから、貴重な映像が多く残っている。是非伝説の低い椅子や独特の演奏姿勢等は目で確かめてほしい。百聞は一見に如かずだから。
本作はトータル10時間超の「ザ・グレン・グールド・コレクション」からバッハ演奏のみを年代順に収めた、2時間を超す映像版ベスト・オブ・バッハ・バイ・グールド。57〜70年に放映された番組から採られているが、なじみの曲の他に、グールドが指揮しながらハープシピアノを弾くブランデンブルク協奏曲第5番やカンタータ(グールドが演奏した唯一の宗教曲)といったCDでは入手困難な(はずの)曲・演奏が含まれていている。これが秀逸。上の曲目リストのM33〜36もハープシコードでの演奏で必聴。
本作で音がCDで入手容易なのはメニューインとの共演だけ(のはず)だが、メニューインの時折グールドに投げかける視線の鋭さが、CDではわからない両天才の真剣勝負の凄みを伝える。
解説も丁寧。M25の最後の音に、グールドは悔いがあったとは!
音はモノで、M27までは白黒映像だが、大満足の作品だ。
本書はわかりやすいグレン・グールド解説本ではありません。
『ゴルドベルク変奏曲』をまねた構成になっており、その意味で、
本書の全体を読了した後、なんとなくグレン・グールドについての
イメージが喚起される、あるいは、グレン・グールドが各章(本の中
の各変奏)ごとに宿っている、というような書き方といったらいい
でしょうか。つまり、グールドの「輪切り」といったら適切かもし
れません。
著者は、
フランスのエリート官僚の経歴ももち、精神分析を駆使し
つつ執筆した本もあるようです。本書では精神分析の影は見受けら
れませんが、音楽に関する知識はさすがに豊富です。ただ、冒頭に
書いたように決してわかりやすい書き方をしているわけではありま
せん。
グレン・グールドの伝記映画のはずですが、それにしてはちょっと変わっています。「グレンミラー物語」等とは違って、1個のストーリーにまとめようとしていないせいか、何かバラバラな印象を受けます。ですが、そのおかげで変に小さくまとまらずにすんでいるような気もするんでよく分かりません。
タイトルのとおり、この映画は32章に分かれていて、グールドに関する(なぜか必ずしも事実でない)生涯のエピソードの間に関係者への(結構興味深い)インタヴュー等が挿入されています。
個人的には、グールドの生涯についてあまり詳しくなかったことと、グールド役のコーム・フィオールがイメージと違ったということもあり、グールド本人が登場する「27歳の記憶」の方が何倍もいいと思ってしまったのですが、グールドの生涯について調べてから見れば、別の見方ができたのかもしれません。
しかし、伝記映画を見る前に予習が必要というのも何か変な気もしますが。