意味のないアナウンスが一切ない、ただ機種(747・777・340…)別に各エアーラインの離発着の映像が流れているだけと言えばそれだけの作品です。ただ、撮影に使われているであろう機材を推察し、アングルを見ると製作者のマニアックな部分を楽しむことが出来る作品で、その方面のマニア以外の方にも「環境ビデオ」的な楽しみ方の出来る作品だと思います。
鶴丸のDC10、センターギアのあるMD11、ANAトライスターが
離着陸する様子を延々とカメラが追い続けます。
コックピット内の撮影、今では航空会社の社員といえども不可らしいです。
ましてや下地島の
タッチ&ゴー訓練中のコックピット映像は超貴重、絶対保存版です。
・若きノンフィクション作家・猪瀬直樹
史上最多の430万票を獲得して、首都・東京の都知事となった猪瀬直樹が
著した本作はいまから30年前に、週刊現代で連載された。当時の著者は、
まだ若手と呼ばれた新鋭のノンフィクション作家だった時代である。
・中心としての
田中角栄、その周縁で死んだ脇役たち
昭和58年、ローッキード事件で
田中角栄に有罪判決が下された。
戦後民主主義の象徴として、君臨していた
田中角栄。その周縁では、
脇役だった男たちも、
ロッキード事件で破錠へと向かっていった。
本作では、事件の周辺で死んでいった脇役たちの過去と事件への
関わり、田中への愛憎や死に至る経緯を解き明かしていく。
もぐりの運転手でしかなかったが、総理大臣の運転手となり、ついには
現金受け渡しの現場に居合わせることになった男。
米国に生まれながら来日し、大物フィクサーの黒子として暗躍した男。
正義感が強く、戦後の航空業界を支えた元全日空社長。
児玉邸に、セスナ機で突っ込んだポルノ男優。
彼らは、
田中角栄という権力者の周りで、権力に魅入られ
ついには死んでいった者たちである。
彼らの個人史を詳細に描くことで、その中心にいた
田中角栄の実像を
浮かびあがらせるのが、本書の狙いである。終章では、その
田中についての批評を加えているが、それは戦後の政治に
ついての言及でもあり、現在にまでつづく政治システムの
欠陥を指摘するものとなっている。
・そして、歴史は繰り返す。
徳田虎男を描いたノンフィクション『トラオ』の中で印象深い一説があった。
石原慎太郎が徳田虎男について「
田中角栄を天使のようにした」人物であると
評したというのである。
田中角栄は、建設業界から登場、日本列島を改造し、最後は、
ロッキード事件で終焉を迎えた。
一方、医療の分野を改革しようとした徳田虎男もいま、疑獄事件の渦中にいる。
そして、著者である猪瀬氏もまた、徳洲会事件で連日ニュースの中心と
なってしまった。その記者会見では、本作で
ロッキード事件に切り込んで
いった著者の面影はない。
事件はまだ、全容が明らかになっていないが、著者の今後に、カネや権力の
イメージがつきまとう事は間違いないであろう。著者は、徳田虎男と
いう中心に魅入られた周縁の一人となるのだろうか。あるいは首都に
君臨する都知事という権力を背にして、かつての輝きを失ったのだろうか。
本文中から
田中角栄について評した文章を、以下にひく。著者の現在の
状況に重ねて読むと、運命の不思議さを、感じられずにはいられない。
感慨深い文章である。
「かつて議員立法で国会の権威をタテに行政官僚機構を揺さぶった田中の
面影は、ここには見られない。田中は自ら拓いた道を自ら閉ざしたのである。
彼は民主主義の制度をねじ曲げた結果できた官僚機構と政権党が連動した政策
決定システムの頂点にたっていたからだ。」