「 2092年年10月12日、ハインツとミゲルはSOSを受け宇宙の墓場の巨大な難破船に踏み込む。
そこは2031年7月3日以来、歌姫エヴァ・フリーデルが永遠に歌う、彼女だけの宮殿だった・・・。」
おそらく、死ぬまで忘れないだろう美しいシーンが、この映画には二つある。その一つは
宮殿の中でミゲルが「屋外」にふと目にした女。巨大なガラス扉に寄り掛かり外を伺うミゲル―
その瞬間、魔法が発動する!突然、扉が開き、仰のくミゲルに吹き寄せる風。そこは、南伊を思わせる
美しい風景。輝く草原を靡かせる颯声、そして、丘を下ってくる赤い
ドレスの女・エヴァ。
やがて風は、女の日傘をさらい、彼女も蜃気楼のごとく消えてゆく・・・。なんと素晴らしい世界!!
そして、プッチーニの「マノン・レスコー」のバリエーションであろう音楽との幸せな結合が
海馬辺縁系に忘れがたい刻印を刻んでゆく。この2分30秒だけで、チケット代のおつりが
来るというものだ。
そして、もう一つは、淀んだ池の中島にある、朽ち果てた四阿。滴るオイルで不気味な
旋律を刻んでいた鍵盤に、ミゲルの指が触れた、その瞬間の、目くるめく変容!!
「ある晴れた日に」が、これほど似合うシーンを、他に知らない。マダム・バタフライに
なりきってミゲルを抱きしめたエヴァは、さぞ幸せだったことだろう。
あらためて、プッチーニが稀代のメロディメーカーであることを思うとともに、この映画も
永遠になったことを知るのだ。オペラが浸透している欧米で評価されるのも当然だろう。
引用とオリジナル音楽の妙は、菅野よう子さんの素晴らしい仕事だ。
そして、脚本の今敏さんに合掌!・・・
このような一輪のバラが咲くなら、宇宙のサルガッソーも悪くない!
見る度に笑わせてくれる「「最臭兵器」、見たくない人間の醜さを見せられる「大砲の街」は
十年で忘れ去っていたが、この二つのシーンゆえに、「彼女の想いで」を忘れることはないだろう。
前作を両バージョン購入した私としては、2作目を買うなら絶対こっちと決めています。なぜなら、1作目のコレクターズ版とエクステンデッド版に大きな差があったからです。
この映画、実際に撮影したものを編集した初期には大変長く、休憩なしには見ることが出来ないほどでした。そこで、フロドに関する部分を残し、ようやく3時間の映画として上映されたのです。しかし、劇場版よりは時間の制限をうけにくいDVDでは、エクステンデッド版のみ未公開シーンが30分程度追加されました。ストーリーの変更に伴い、音楽も収録し直しするという念の入れようですから、おもしろくないわけがない!話としても、こちらのほうが分かりやすくなっています。
2作目のエクステンデッド版では、映画版にさらに40分の未公開シーンが追加予定となっています。これだけでも期待は十分高まろうというもの。
さあ、永久保存版として大切にしましょう!