家族の愛ということをあらためた見つめ直せる本です。千住真理子さんとお母様の相手を想う気持ちがいたるところに星のごとくキラキラ輝いている。千住さんの
バイオリン演奏を聴いている時と同じ感動を、涙がながれました。
スイスの大富豪の遺言により、
オークションにかけられることなく、購入対象者としてエントリーした演奏家たちの間を渡り歩いていく、ストラディヴァリウス。ある人のつてにより、千住真理子も弾ける可能性が出てきたが、それでも億という単位の価格のするこの名器は、千住家には無縁と思われた。
何の因果があってか、楽器が人を選ぶがごとく、千住真理子の手へと渡ってきたストラディヴァリウス。何度も名残惜しげに無人のコンサートホールで験し弾きをする、千住真理子。ヴァイオリンは、このまま次のエントリーの演奏家に渡るかと思われた矢先、千住博氏、千住明氏の千住兄弟が現れて、家族一丸となって動き、ストラディヴァリウスが、劇的に千住真理子の所有となるまでの感動の物語。その過程はスリリングですらある。
「すべての運命は神が司ることでありながら、最後の最後は、人間自身の責任によって結論が出る」。千住3兄弟の母親である千住文子氏のこの言葉から伺えるように、本書は、人智を超えた不思議な運命にめぐりあいながらも、それに家族全員で真剣に立ち向かうことにより、通常ではありえないような、すばらしい賜物を勝ち得るという物語でもある。
それほど裕福とは言えない家庭で、つつましく暮らしていた主婦が、何億というお金を銀行で入金することになる、恐ろしさ、そしてその不思議さ。千住家に興味がある人はもちろん、そうでない人も、ヴァイオリンの名器に翻弄されながらも、それをついに勝ち得るまでの過程を胸をドキドキさせながら、読み進めることになるだろう。
収録された16曲の中にはこれまで聞いたことのない曲が
いくつもあるが、通して聞けば全体が流れるようで心地いい。
センチメントな気分に浸る。
終わりに近づいているがなお美しい、
紅葉した山の姿が思い浮かぶ。
山全体の美しさとともに、微妙に異なる木々の色合いが素晴らしい。
最後のアンダンテは、母・文子さんへの思いが詰まっている。
無念、祈り・安らぎ、感謝、決意が語られているように感じた。
千住さんご本人も仰っていましたが、日本人なら誰もが知っている日本のうたを
バイオリンで奏でるのは相当に難しいこと。
逆にデュランティという名器を、類い希なる技術と優しくとも熱いハートで奏で完成されたこのアルバムを聴くと、癒しを超越してまさに感動です。
英語では、”I am delgihted.” の境地です。聴いているうちに、いつも間にか目に涙が溢れていました。
被災地での訪問演奏活動等を通して頑張っている姿勢といい、このようなCDを製作することといい、まさに日本が世界に誇れる女流バイオリニストです。