世界有数の超能力(及び少々問題
アリな性格)を有する3人の女子小学生"ザ・チルドレン"を中心に、プラスマイナス両極端な方向へ彼女達を導こうと画策する二つの勢力の争いを、豊富なギャグと少々のシリアスさを交えて描き出す、超能力アクションコメディ作品第8巻。
著者・椎名高志氏らしい、おバカで少々H且つ下品なギャグと、凝った世界観及び超能力や組織に関する設定、各キャラクターの心理面へのアプローチ、そして実社会を少々アイロニックに写しているような多少の毒をも含んだ、非常に楽しめる要素の多い作品です。
今巻は電波と磁気を操り、情報撹乱を得意とする電磁波義兄弟との決着から始まります。超有名アニメを元にした小ネタが、分かる方には楽しいですね。
そしてその決着後に始まるエピソード「逃亡者」が今巻のメイン。この作品、スタート直後に先の展開をかなり縛ってしまうような強力な伏線が張られている点が大きな特徴ですが、その伏線にかなりダイレクトに影響すると思われる様々な設定や状況が追加されるエピソードとなっていますね。新キャラ・桃太郎を通して描かれる普通人とエスパーの間にある大きな壁。薫の「自分がライオンやトラだったことがないから…!!」という叫びは物語の本質を鋭く抉っています。皆本との間にある認識のズレや、兵部に対して感じてしまったシンパシー等、薫の心に大きな波紋を投げかけるかなり重い展開が繰り広げられるエピソードですね。ただどこまでがマジでどこからがギャグなのかかなり曖昧な収束を向かえるあたり、ややはぐらかされた印象が無くもないですが、エンターテイメントに徹した著者の執筆姿勢が覗えるエピソードでも有ります。こういったシリアスとギャグの微妙なバランスこそ椎名作品の真骨頂ですね。
巻末から始まる新展開では、久々に
バベル・パンドラに次ぐ第3局「普通の人々」が物語に関わってきます。相変わらず退屈させない構成ですね。