グリム童話がわれらが幼き日の懐かしい思い出の一つであり続けるとしても、こちらは必ずしもそうではなかろう。これを、子や孫たちに読み聞かせたらどういう反応があるか試してみたくなる。この本、この作品は大人のための「昔話」である。17世紀末に
フランス宮廷貴族が書いたアイロニーに満ちた教訓説話というべきか。『眠れる森の美女』を救い出した王子様の母=王妃が、「人食い鬼」とは知らなかったワ!と周囲に吹聴し、「サンドリヨン」(シンデレラ)の主人公の諧謔的セリフに驚き……読者は飽きずに読了が可能になるのがこの小冊子だ。『赤頭巾』巻末の「教訓」に仰天させられる、と書いたら誰かが笑うだろうか?200ページ強の本書の半ば以上は訳者による「解説」で、これが本書のもう一つの魅力になっている。別途調べた原文も、それは美しい
フランス語だったのがうれしい誤算といえた。