ときどき間違えてしまっているところもあるが、うまさがあった。最近思うが、古い年代の人たちの方が現代の人よりもうまいと感じる。録音が悪いせいで、少し変な音になっているところもあるが・・・。
ハリーナ・ツェルニー=ステファンスカは
ポーランド生まれ、
ショパンコンクールの優勝経験も持つ、まさに
ショパンのスペシャリスト。活動も演奏も派手ではなかったが、
ショパンの演奏は地に足がついているようで、どれも安心して聞くことができる。
その彼女の残した録音で最も代表的なのが、このマズルカ全集。ほかの「マズルカの名盤」と聞き比べると少し地味だが、それぞれの曲調にあわせて快活に弄り回ったり愁いを帯びた響きで旋律を謳いあげたりと、とても表情が豊かだ。特に比較的初期の作品である作品7-4や、遺作である作品67-4にはそれが顕著だ。
ステファンスカのマズルカは、どことなく「土の匂い」のようなものがする。ピアノの音の中に、「マズルカ」を生み出した土地の様子が見えるようだ。それにリズムにも微妙な「ゆらぎ」があって、ただピアノ曲として優雅なだけではなく、もとの姿である舞曲としてのマズルカの魅力をたっぷりと見せてくれる。
~東京芸術大学の客員教授だった
ポーランドの名ピアニスト、ハリーナ・チェルニー・ステファンスカ。彼女の弟子であり、芸大で助手を務めた著者が、共に過ごした日々を綴る。
《本書まえがきより》
この本を手にした方が、ハリーナ・チェルニー・ステファンスカという偉大なピアニストが存在したことを認識され、興味を持って読んでいただければ幸いに思~~う。また、生前の先生をご存知の方には、あの美しいピアノの音色と温かい微笑を思い出していただければ、先生に対しての、私の少しばかりの恩返しになるかもしれないと思う。
2003年 4月
吉川もと子
《プロフィール》
ピアニスト。東京芸術大学付属高等学校、東京芸術大学を経て、ワルシャワ・
ショパン・アカデミー大学院研究科卒業。~