『
りぜるまいん』の本放送を初めて見たとき、私は見るのをすぐにやめてしま
った。当時は”萌え”の概念になじみがなく、作品のノリを理解できなかった
ためだ。
あれから11年、ネットに触れてきたせいもあり、私も随分と訓練されてきた。
振り返ると、随分と遠くに来てしまったように改めて感じる。
そんな私がこの作品との思いがけない再会を果たしたのは、某CS局(の無料
視聴期間)においてであった。ふとわいた懐かしさに視聴すると、あの頃には
理解の概念すらなかった本作の魅力が、奔流の如く心中に押し寄せてきたのだ
った。
明るく前向きでくじけないが、友紀への献身的な努力が空回りしてばかりのり
ぜると、好みとは正反対のりぜるを迷惑がりつつも放っておけない友紀。この
二人がドタバタを繰り広げつつも次第に距離を縮めてゆく様は、王道ながらも
近年では珍しくなったラブコメディである。
テンポよく話が進行するため、一話が15分ほどと短いながら、充足感はたっぷ
り。一気に見てもだれてこないし、頑張るりぜるをお好みで楽しみたいときに
もいい。
もちろんハラハラドキドキさせる展開もあり、きっちり泣きも入れてくる。特
に二人が出会うべくして出会う運命だったことを知ったとき、実に胸の熱くな
る思いがしたものだ。そしてそれは、りぜるが終盤に見せた決意にとてつもな
い重みを持たせ、同時に彼女が真の意味で成長を遂げた証なのだと我々は知る
のである。
もちろん、ヒロインであるりぜるが実に愛らしい。これほどの美少女が友紀に
尽くす様は、少々鬱陶しそうでも羨ましく思わずにいられない。単に萌えキャ
ラとしても、今でも十分に通用するのではないか。それに何より、大好きな友
紀のそばにいて、この上なく幸せそうな彼女の姿が、傍目にもいとおしくてた
まらない。言うまでもなく私は、(今さらながら)彼女のファンとなった。
りぜるを演じた釘宮さんの好演ぶりもなかなかのもの。ツンデレにそこまで思
い入れのない(とらドラ!は好きだが)私としては、りぜるで見せたような愛
らしさあふれる演技の方が好みである。
なお、本作はお色気が多めなので、そういうのが気になる人はご注意を。特に
13〜24話では特に顕著になる。11年前ですら、今と比べるとよほどフリーダム
だったのだ。
11年越しの再会を果たした本作のことを、私は決して忘れない。
既にDVDとしてはリリースされている本作だが、BDとしては初のリリースとなる
本商品は、フルHDにデジタルリマスターされていることが最大の売りである。
実際にDVDと比べると、輪郭がなめらかになっており、発色も鮮やかになってい
るように見受けられた。それでもBDプレイヤー+36型ブラウン管テレビでは意外
と差が感じられなかったが、PC+フルHD液晶モニターだとその恩恵は大きい。高
画質で楽しみたいなら、BDである本商品しかあるまい。
しかし嘆かわしいことに、それ以外の売りがほとんどない。映像特典としては
ノンクレジットOP・ED、当時のCM、2バージョンの予告などで、おそらくDVDで
も収録されたものではないだろうか。リーフレットもごくシンプル。スギサキ
ユキル氏描き下ろしのイラストカードも、原作を知らない者にとってはむしろ
違和感を覚えるだけ。私はDVDを一枚持っているだけだったのでこれを購入し、
星五つの満足を得られたが、既にDVDをお持ちの方が購入しても実に物足りない
だろう。
ただBD-BOXを出したというだけであり、ポニーキャニオンのやる気が感じられ
なかったのである。DVDの所有者をも取り込むくらいの気概を持って製作してほ
しかった。フィギュアの一つでもつけるだけで結構違うと思うのだが・・・ち
ゃんと仕事しなさい!
この再会を機に本作をネットで調べてみたが、情報が少ないことに驚いた。
ウィキペディアでの記述は少なく、微妙そうな出来のフィギュアが2種類発売さ
れただけ、某画像投稿サイトでは投稿数が3桁にも満たないなど、過去にも現在
にも盛り上がりを欠いているのが残念でならない。
BD-BOX発売、某CS局での放送と、にわかに光が差した本作が、再びこのまま埋
もれ行くのは何とも惜しい。これを機にもう少し盛り上がりが見られたら、あ
わよくば出来の良いフィギュアの一つでも作られたなら、と願ってやまない。
少なくとも今の私は、そういうタイプのファンである。