かつてオリンピックで日本中を熱狂させたスピードスケート・金メ
ダリストの本。内容は大きく2つに分けられる。まず、一つ目は著者の半生について。二つ目は、自身の経験を中心にプレッシャーとの付き合い方をはじめとした各種の教訓とアドバイスである。
ひとつ目の経歴について。スピードスケートの選手としては決定的に不利な
身長。さらに、ぜんそくや腰の病気。一流選手にはなれないと思われていた当時のこんな常識を乗り越えた経緯が胸を打つ。まだ若いのに結局ガンで他界してしまったお父さんとの壮絶なト
レーニングの日々や、大学進学後のお金を工面するために遺された家族が支えたこと。高校時代に先輩達からターゲットにされて耐えた思い出も振り返っている。オリンピックについては、自身のことだけでなくリレハンメル大会での日本選手団の失敗についても言及。その反省から長野五輪では著者はかなり早い段階で代表に内定したが、長期間プレッシャーと向かい合うことにもなったそうだ。選手引退後は医療経営学を学び、元々人前で話すのが苦手だったのに、いろいろな講演会などで喋ったりコメンテータとして活動するようになる。
ふたつ目の各種アドバイスに関しては、プレッシャーが無いと筋肉はかえって鈍るし、適度のプレッシャーは力を発揮するためにはむしろ重要としている。また、緊張したときは頭の中で8の字を描いたり、体をなぞったりするというようなコツも紹介。計画的な失敗や、短期・中期・長期の目標の分け方といったことにも触れている。
当然、一つ目の自身のキャリアの話と二つ目の教訓の話は密接に結びつくし、だからこそ一見ありきたりな内容であっても説得力がある。本番において自分を客観視して見ているもう一人の自分がいるという点は、イチローも似たようなことを語っているのを読んだことがあるので印象に残った。簡単に読める。それなりに面白かった。
清水さんご自身が腰痛の体験者なので、説得力があります。しかも壮絶な腰痛とレースの戦いがあったとのこと。本当に腰痛の人の役に立ちたいという思いが溢れていて、自らを被写体としてメソッドの写真のカットを撮っています。
ただ単に接骨院の先生であったり治療院の先生と自分自身で経験している人が腰痛について語るのでは雲泥の違いがあります。
たくさん腰痛の方に読んでいただき、少しでも腰痛のおびえから解き放たれることを切に祈ります。
また、大層な
タイトルだなあ。と、出合い頭はちょっと身構えてしまった。しかし、そもそも清水選手の高尚なオーラを放つ求道者のような存在に関心を抱いていたため、購入。そして読み進めた。止まらなかった。完全に彼の世界に導かれ、彼の鋼の精神に射抜かれてしまったのだ。それは驚愕と感嘆の連続であった。
もはや溜息すら出ない、彼の壮絶な奮闘っぷりは本書で直に打たれていただくとして、ここで記しておくべきは、次代を担う後継者に対しての文献的な意義であろう。著者の吉井氏があとがきで述べられているように、アスリートの方にこそ一読をお勧めする。それは清水選手の真意のひとつでもあるのだが、異次元といわれる彼の世界をインタヴュ-をもとに精緻に書き記すことで、その異次元は次代に受け継がれ、共有され、人類はさらなる異次元へと突入する。そうして我々は長きにわたって秘められたままの「神の肉体」を取り戻すのだ。
人間の未曾有の可能性を記そうと骨身を削る吉井氏のまっすぐな情熱に、何より、清水の死をも恐れぬ不抜の気概に、明日を生きる鮮血が私の体内を駆け巡った。